Vinyl Record Reviews
Beckは、アメリカ・ロサンゼルス出身のシンガーソングライター/マルチ・インストゥルメンタリストだ。1970年7月8日生まれで、父はDavid Campbell、母はBibbe Hansen、祖父はAl Hansen。音楽活動だけでなく、映像作品やさまざまなコラボレーションでも知られている。
両親の離婚後は母親と暮らし、14歳で学校を離れたあと、しばらく各地を転々としていた。その後ロサンゼルスに戻り、オープンマイクのイベントで演奏していたところを、地元のレーベルBong Load Custom Recordsに見いだされる。1993年に500枚限定で出た「Loser」がラジオDJを通じて広まり、1994年のDGC盤リリースで国際的なヒットになった。
Beckの特徴は、同じ型を繰り返さずに作風を変えてきた点にある。フォーク的な要素を取り入れたヒップホップ、インディー・ロック、オルタナティブ・ロック、ディスコ、アフロビート、ダウンテンポ、ファンク、ソウル、エレクトロなどを横断しながら作品を発表してきた。
初期の「Loser」では、ラップ的な語り口とローファイな感触が注目された。その後の作品でも、サンプル感の強いビート、ギター主体のロック、打ち込みを使った曲、アコースティック寄りの楽曲が並び、アルバムごとに色がかなり違う。
1996年の『Odelay』は、Beckの代表作としてよく挙げられるアルバムだ。「Devil's Haircut」「Where It's At」「The New Pollution」などが収録され、批評面でも商業面でも大きな成功を収めた。ヒップホップ、ロック、ファンクの要素を細かくつないだ構成が印象的で、この時期の重要作として扱われている。
その後も活動は続き、グラミー賞の最優秀アルバム賞には『Odelay』(1997年)と『Midnite Vultures』(2000年)がノミネートされた。2002年の『Sea Change』では、前作までとは違って内省的な曲調が前面に出ている。2014年の『Morning Phase』は『Sea Change』の姉妹編と評され、2015年のグラミー賞で最優秀アルバム賞を初めて受賞した。ゆったりしたテンポと、ストラミングを中心にした演奏、美しいメロディが目立つ作品として受け止められている。
Beckは、1990年代のブレイク以降も、ロック寄りの曲、ビート主体の曲、アコースティックな曲を行き来しながら活動してきた。作品ごとに音の作り方が変わるため、入口になるアルバムも聴き手によって分かれやすい。とはいえ、1994年の「Loser」、1996年の『Odelay』、2014年の『Morning Phase』あたりを追うだけでも、彼の音楽の変化はかなり見えてくる。