Vinyl Record Reviews
Björk(ビョーク)は、1965年11月21日にレイキャビクで生まれたアイスランド出身のシンガー、ソングライター、ミュージシャン、プロデューサー、俳優、DJだ。名前はBjörk Guðmundsdóttir。活動では主にBjörkの名義を使っている。ボーカル、作曲、プロデュース、映像表現まで含めて活動してきた人物で、実験性の強い作品で知られている。
キャリアの初期にはバンド活動を行い、その後ソロでの活動を広げていった。ソロでは、Electronic、Pop、Jazzを軸にしながら、Downtempo、IDM、Experimental、Leftfield、Trip Hop、Big Beat、Big Band、Synth-pop、Houseなど、かなり幅広いスタイルを取り入れている。
作品ごとに編成や音の作り方を変えることが多く、打ち込み中心の曲から、管楽器やオーケストラ的なアレンジを使う曲まで振れ幅が大きい。ジャンルを固定せず、曲単位で表情を変えていくタイプのアーティストとして見られている。
Björkの作品は、電子音楽の処理と人の声の扱いが大きな軸になっている。歌メロを前に出す曲もあれば、ビートや音響処理を細かく積み上げる曲もある。IDMやExperimentalの要素が強い時期には、リズムの組み方や音色の選び方にかなり踏み込んでいる。
一方で、PopやSynth-popの感覚も持っていて、聴きやすいフックを残したまま、構成や音の質感を崩しすぎないバランスを取っている。Trip HopやDowntempo寄りの曲では、テンポを抑えたビートの上に声を置く形も見られる。JazzやBig Bandの要素が入る場面では、楽器編成の情報量が増え、ポップソングとは違う展開を作っている。
Björkは音楽だけでなく、俳優としても大きな存在感を示している。2000年のカンヌ国際映画祭では、ラース・フォン・トリアー監督の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』で主演を務め、最優秀女優賞を受賞した。この作品はパルム・ドールも受賞している。
2001年の第73回アカデミー賞では、マルヤン・ペヨスキがデザインした「白鳥のドレス」で登場した。羽根を使った衣装と、卵を模したポーチからレッドカーペットに卵をばらまく演出は当時かなり話題になり、その後もレッドカーペット史の中でよく語られている。
音楽面では、Rolling Stoneの「100 Greatest vocalists of all time」で60位に選ばれている。1997年にはアイスランドの「Order of the Falcon」を受章している。
2011年の『Biophilia』は、世界初の「アプリ・アルバム」とされる作品だ。3次元の銀河空間を移動しながら、10のインタラクティブなアプリを通して曲を体験する仕組みになっている。音楽、自然、テクノロジーをまたぐ設計で、従来のアルバムの枠を広げる試みとして注目された。
この作品は2014年にニューヨーク近代美術館(MoMA)の常設コレクションに加わり、アプリとしては初めて同館に収蔵された作品になっている。Björkの活動が、音源制作だけでなく、作品の見せ方や体験の形式まで含めて展開していることが分かる例だ。
Björkは、音楽家としての活動に加えて、映画、アート、テクノロジーの領域にも関わってきた。作品ごとに表現方法を変える姿勢がはっきりしていて、音だけでなくビジュアルやインタラクションも含めて構成する場面が多い。
関連サイトも多く、公式サイトのほか、Bandcamp、Instagram、X、YouTube、SoundCloudなどでも情報を追える。近年の活動や作品の更新をたどるには、こうした公式・準公式の導線が使いやすい。
Björkを入口にするときは、まず声の使い方と音の組み方を追うと分かりやすい。ポップソングとして聴ける曲と、実験的な構成の曲が同じアーティストの中に並んでいるので、アルバムごとの違いを見るのも面白い。音楽、映像、衣装、テクノロジーが別々ではなく、ひとつの作品としてつながっているところが、この人の活動の特徴になっている。