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Cabaret Voltaireは、イングランド・シェフィールドで1973年に結成された英国のエレクトロニック・グループだ。初期メンバーはStephen Mallinder、Richard H. Kirk、Chris Watsonで、バンド名はスイス・チューリッヒのクラブ「Cabaret Voltaire」に由来する。このクラブはダダ運動の初期拠点として知られている。
活動初期は、演奏というよりもパフォーマンス・アートに近い形で、ダダの影響を受けた実験的な表現を行っていた。その後、ポップ、ダンス・ミュージック、テクノ、ダブ、ハウス、実験電子音楽を横断するグループへと発展していく。
Cabaret Voltaireの初期活動を語るうえで重要なのが、William BurroughsとBrion Gysinのカットアップ技法との関係だ。1973年から、テープを物理的に切り貼りしてループを作る実験を行い、リール・トゥ・リールのテープレコーダーや簡素な電子機器を使って音の断片を組み合わせていった。
Stephen Mallinderは後年、この時期の作業についてBurroughsとGysinへの強い参照があったと振り返っている。文学の手法を音響操作に置き換えた活動で、ライブも通常のコンサートというより実験的な場として機能していた。
1975年5月13日の初ライブでは、観客から物を投げられてMallinderが負傷したという記録が残っている。ただし、パンクの登場後は、彼らのインダストリアルで電子的な音は受け入れられやすくなり、地元シェフィールドのパンク系ファンジンや周辺のミュージシャンから支持を得た。
1978年にはRough Trade Recordsと契約し、以後は実験性の強いシングルやEPを発表する。代表的な作品としては「Extended Play」「Nag Nag Nag」「Three Mantras」などがあり、アルバムでは『The Voice of America』(1980年)、『Red Mecca』(1981年)が挙げられる。
Cabaret Voltaireは、結成当初のノイズやテープ実験だけでなく、後にシンセポップ、エレクトロ、テクノ、ダブ、ハウスの要素も取り込んでいく。特に1980年代には、インダストリアル寄りの初期作から、クラブ向けの要素を含む方向へと進んだ。
1981年末にChris Watsonがテレビの仕事のため脱退した後も活動は続き、1982年には日本録音のライブ盤『Hai!』を発表している。1983年には『The Crackdown』でより商業的な方向へ進み、UKアルバム・チャートで31位を記録した。続く『Micro Phonies』(1984年)からは「Sensoria」「James Brown」がシングルとして知られている。
その後も『Code』(1987年)、ハウス色のある『Groovy, Laidback & Nasty』(1990年)へと展開し、1992年から1994年にはインストゥルメンタル作品も発表している。Mallinderが歌唱で参加した最後のCabaret Voltaire名義のアルバムは『Body And Soul』(1991年)だ。
Cabaret Voltaireは、英国の電子音楽初期を語るうえで、SheffieldのHuman LeagueやClock DVAと並んで参照されることが多い。特にテクノ、ハウス、インダストリアル、IDMの形成に対する影響が大きかったとされている。
1980年代末にはRichard H. KirkがDJ Parrotと組んだSweet Exorcist名義でWarp Recordsから作品を発表しており、シェフィールドのクラブJive Turkeyとも関わりながら、いわゆるブリープ・テクノの流れに接続していく。シェフィールドでハウス/テクノが根づいていく初期の局面に、この周辺の動きが重なっている。
Chris Watsonは1981年に脱退後、The Hafler Trioを経てBBCのサウンド・エンジニアとなり、フィールド・レコーディング作品も発表している。
Richard H. KirkはElectronic EyeやSandozなど複数の名義でソロ活動を続け、2014年にはベルリンのAtonal FestivalでCabaret Voltaire名義を再起動した。その流れから、2020年11月には『Shadow Of Fear』がリリースされている。Kirkは2021年9月21日に死去した。
Stephen Mallinderはオーストラリアのパースに移住した時期を経て、Sassi & LocoやKuling-Brosなどで活動し、現在はWranglerやCreep Showなどにも参加している。
2025年10月25日には、Stephen MallinderとChris WatsonがシェフィールドのForge WarehouseでCabaret Voltaire名義の限定ライブを行った。その後、11月にはUKツアーが行われた。2025年ツアー中には「Final Tour」が発表され、2026年にかけて英国とヨーロッパを回り、10月25日にシェフィールドのThe Octagon Centreで終える日程が案内されている。
Cabaret Voltaireは、テープ操作、ダダ、インダストリアル、クラブ・ミュージックの要素をつないでいったグループとして見ておくと整理しやすい。初期の実験から80年代のチャート入り作品、さらに後年の再始動まで、シェフィールド発の電子音楽史を追ううえで外せない存在だ。