Vinyl Record Reviews
D'Angelo(ディアンジェロ)は、アメリカ・バージニア州リッチモンド出身のシンガー、ソングライター、マルチ・インストゥルメンタリスト、プロデューサーだ。1974年2月11日生まれで、2025年10月14日にニューヨークで亡くなった。
1990年代半ばのネオ・ソウル・ムーヴメントを代表する存在として知られ、R&B、ファンク、ソウル、ヒップホップの要素を横断しながら作品を残した。若い頃から注目を集め、10代でハーレムのアポロ・シアターのアマチュア・タレント・コンテストで3週連続優勝した記録がある。
1995年に発表したデビュー・アルバム『Brown Sugar』は、広く高い評価を受け、200万枚を超えるセールスを記録した。ここでD'Angeloは、従来のR&Bの流れを引き継ぎつつ、ヒップホップ由来のビート感や、ファンク寄りの演奏感を前面に出した。
この時点で、彼はネオ・ソウルの中心人物として見られるようになっていく。後の作品を追ううえでも、『Brown Sugar』は出発点として重要だ。
2000年の2作目『Voodoo』は、D'Angeloの代表作としてよく挙げられる。全米ビルボード200で初登場1位を獲得し、シングル「Untitled (How Does It Feel)」はR&Bチャートに入り、グラミー賞では最優秀男性R&Bヴォーカル・パフォーマンスを受賞した。アルバム自体も最優秀R&Bアルバムを受賞している。
この作品は、クエストラヴやJ・ディラらが集まったソウルクエリアンズの制作環境とも結びついて語られる。ニューヨークのエレクトリック・レディ・スタジオを拠点に、共同生活を送りながら作られたことが知られている。J・ディラは正式クレジットこそないものの、ビートのもたつきやパーカッションの質感に大きく関わったとされる。
音の面では、タイトに揃えたグルーヴよりも、少し後ろにずれるようなリズム感が目立つ。ファンクの演奏感と、ヒップホップのサンプリング感覚が近い場所で処理されていて、そこにD'Angeloの歌が乗る形だ。
「Untitled (How Does It Feel)」のミュージックビデオは、D'Angelo本人が全裸で歌う演出でも大きな話題になった。この映像は強い注目を集め、本人にプレッシャーを与えたとも伝えられている。その後の薬物やアルコールの問題、公の場からの長い離脱にもつながったとされる。
楽曲そのものは、歌唱とバンドの演奏が前面に出た構成で、D'Angeloの声の細かなニュアンスがはっきり残る。派手な展開よりも、フレーズの置き方や間の取り方で引っ張るタイプの曲だ。
2014年には3作目『Black Messiah』を発表した。長いブランクのあとに出た作品だったが、批評面では高く評価され、全米ビルボード200では最高5位を記録している。
この時期のD'Angeloは、GQ誌から「次なるマーヴィン・ゲイ」と評されたことでも知られる。社会的なテーマを含む曲もあり、音楽的にはソウル、ファンク、R&Bの要素を保ちながら、より生々しい演奏とリズムを前に出していた。
D'Angeloは、1990年代以降のR&Bやネオ・ソウルの流れを語るときに外しにくい人物だ。デビュー作の成功、2作目『Voodoo』の評価、そして『Black Messiah』での復帰まで、作品ごとに注目点がはっきりしている。
彼の音楽は、歌唱力だけで押し切るタイプではなく、演奏、リズム、制作の組み合わせで成立している。アポロ・シアターでの若い頃の実績から、グラミー受賞歴のあるアルバム、そして長い沈黙を経た復帰作まで、活動歴そのものがネオ・ソウルの歴史と重なっている。