D'Angelo - Voodoo (2000)
D'Angelo『Voodoo』――ネオ・ソウルの流れを決定づけた2000年の重要作
D'Angeloの『Voodoo』は、2000年にVirginからリリースされたセカンド・アルバムで、彼のキャリアの中でも特に大きな位置を占める作品だ。前作『Brown Sugar』で注目を集めたあと、5年を経て発表された本作は、R&B、ファンク、ソウル、ヒップホップの要素を高い密度で組み合わせながら、当時のブラック・ミュージックの感覚を更新したアルバムとして語られてきた。全米アルバム・チャートで初登場1位を記録し、グラミー賞では最優秀R&Bアルバム賞を受賞している。
この盤はUS盤の2000年リリースで、レーベルはVirgin。録音とミックスはニューヨークのElectric Lady Studios、マスタリングはSterling Soundで行われている。制作の中心には、Soulquariansと呼ばれるミュージシャン/プロデューサーの集団がいたことも重要だ。Questlove、Pino Palladino、J Dilla、Roy Hargroveらが関わり、ジャズ、ヒップホップ、ソウルの境界をまたぐ感覚がアルバム全体に通っている。
リズムの「後ろ倒し」が作る独特の時間感覚
『Voodoo』を語るうえで外せないのが、曲全体に漂う「レイドバック」したテンポ感だ。いわゆるきっちり前へ進むビートではなく、拍のわずか後ろに重心を置いたような演奏が多く、聴き手には少し遅れて来るような感触が残る。とはいえ、単にゆるいわけではなく、各パートの配置はかなり緻密で、ベース、ドラム、歌、ホーンが互いに譲り合いながら前進していく印象がある。
実際に通して聴くと、音数は多くないのに空間の密度が高い。低音は厚く、ドラムは乾きすぎず、ボーカルは近い。派手な展開で押すのではなく、同じフレーズの反復や、細かなタイミングのズレで引き込んでいく作りだ。Prince、Sly & The Family Stone、Marvin Gayeといった先達の影が見えつつ、90年代末のヒップホップ以降の感覚が自然に混ざっている。
「Untitled (How Does It Feel)」――代表曲として残る一曲
アルバムの代表曲としてまず挙がるのが「Untitled (How Does It Feel)」だ。プリンスへのオマージュを思わせる官能的なバラードで、D'Angeloの声の質感が非常によく出ている。歌い回しは大きく誇張せず、フレーズの終わりで少し粘るような歌唱が印象に残る。伴奏も過剰に装飾されず、歌とグルーヴの関係が前面に出る作りだ。
この曲はシングルとしても注目を集め、映像面でも大きな話題になった。音だけでなく、身体性まで含めて受け止められた楽曲であり、『Voodoo』というアルバムのイメージを象徴する一曲として定着している。派手なフックで押すタイプではないが、アルバム全体の流れの中で聴くと、音の密度と緊張感が際立つ。
「Spanish Joint」――ジャズとファンクが自然につながる曲
「Spanish Joint」は、ロイ・ハーグローヴのトランペットが映えるラテン色のあるファンク・ナンバーだ。リズムは跳ねすぎず、しかし軽さだけにも寄らない。ホーンの入り方、パーカッションの置き方、ベースのうねり方がよく噛み合っていて、アルバム中でも比較的動きのある曲として耳に残る。
ここでは、D'Angeloが単に歌うだけでなく、バンド全体の呼吸を組み立てる側にいることがわかる。ジャズの即興性、ファンクの反復、ソウルの歌心が一つの曲の中で無理なく共存していて、Soulquarians的な感覚が最もわかりやすく出ている場面のひとつだと思える。
「Devil's Pie」――ヒップホップとの接点が見えるダークな一曲
「Devil's Pie」は、DJ Premierが関わったことで知られる、より硬質な質感の曲だ。アルバム全体の中ではやや重い空気を持ち、ヒップホップのビート感とソウルの土台が強く結びついている。サンプリングや引用の扱いも含めて、90年代のR&Bがヒップホップと接続していく流れが、そのまま表れているような楽曲だ。
この曲があることで、『Voodoo』は単なる古いソウルの再現ではなく、同時代のビート文化を吸収した作品として聴こえる。ファンクの身体性と、ヒップホップの骨格、その両方を持ちながら、D'Angelo自身のボーカルが中心に残る構造になっている。
アルバムの位置づけと聴きどころ
『Voodoo』は、D'Angeloのディスコグラフィーの中でも、完成度と影響力の両面で特に大きい作品だ。『Brown Sugar』で示したネオ・ソウルの方向性をさらに押し進め、2000年代以降のR&Bやソウルの基準を作った一枚として扱われることが多い。Black musicの中で、歌・演奏・ビートの関係をここまで緊密に作り込んだアルバムは、当時としてもかなり存在感があった。
また、収録曲にはサンプルやインターポレーションのクレジットが丁寧に記されており、ヒップホップ的な制作感覚が裏側で支えていることもわかる。ライナーにはクレジット、歌詞、詳細なノートが収められていて、作品をじっくり追う楽しみもある。2000年という時点でここまで有機的で、同時に構築的なソウル・アルバムを作ったこと自体が、この作品の価値を示している。
トラックリスト
- A1 Playa Playa
- A2 Devil's Pie
- A3 Left & Right
- B1 The Line
- B2 Send It On
- B3 Chicken Grease
- B4 One Mo'gin
- C1 The Root
- C2 Spanish Joint
- C3 Feel Like Makin' Love
- D1 Greatdayndamornin' / Booty
- D2 Untitled (How Does It Feel)
- D3 Africa
動画
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Playa Playa
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Devil's Pie
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Left And Right
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The Line
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Send It On
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Chicken Grease
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One Mo'Gin
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The Root
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Spanish Joint
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Feel Like Makin' Love
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Greatdayndamornin'/Booty
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Untitled (How Does It Feel)
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Africa