Vinyl Record Reviews
Ertlifは、1970年にスイス・バーゼルで結成されたプログレッシブ・ロック・グループだ。ジャンルはロックで、実際の活動ではサイケデリック・ロックとプログ・ロックの要素が強い。バンド名は、中世の謎めいた魔術師/錬金術師の名に由来するとされている。
結成当時は、Pink Floyd、Procol Harum、Deep Purple、Black Sabbath、Genesis、そしてチューリッヒのKrokodilなどが国際的に存在感を持っていた時期で、Ertlifもその流れの中で登場した。スイス国内では、メロトロンやシンセサイザーを使い、ライブで火薬を用いた演出まで取り入れるなど、かなり先進的な試みを行っていたバンドとして知られている。
結成の中心にいたのは、前身バンドEgg & Baconの元メンバーでもあるギタリストのダニー・アンドレイとベーシストのテディ・リードだ。そこにキーボードのジェームス・モスバーガー、ドラムのハンスペーター・ベルリンらが加わり、バーゼルの音楽シーンのメンバーが集まっていった。
1971年秋には、ロンドンからバーゼルに移ったリチャード・ジョン・ルシンスキがリード・ヴォーカルとして加入する。彼は渡欧前のイギリスで、Autumn Symphonyなどの名義で18枚ものシングルを発表していた経歴を持つ人物だ。翌1972年、彼を迎えたセルフタイトルのデビュー・アルバムを発表している。
Ertlifの音楽は、サイケデリック・ロックとプログ・ロックを軸にしている。初期からメロトロン、シンセサイザー、長めの展開を持つ楽曲構成など、当時のプログレッシブ・ロックらしい要素を取り入れていた。
ライブ面では、火薬を使った演出まで行っていたという情報があり、音だけでなくステージ全体で印象を残すタイプのバンドだったようだ。スイスのロック・シーンの中でも、機材や演出へのこだわりが目立つ存在だった。
バンドは国内外で一定の成功を収めたのち、1978年にいったん解散する。その後、1992年から93年にかけてオリジナル・メンバーによって再結成され、2001年には2作目のアルバムをCDで発表した。
以降もメンバー交代を重ねながら活動を続けており、2026年時点でもバンドとしては現役だ。ただし、現在の編成には創設メンバーは残っていない。プロフィール情報では、現在のメンバーはAndy Seghers(ギター)、Claude Weinmann(キーボード)、Cornel Sidler(ドラム)、Ralf Behrens(ヴォーカル)、Patrick Unger(ベース)となっている。
長い活動の中で、バンドの顔だったリチャード・ジョン・ルシンスキは1972年から2018年まで46年間にわたりヴォーカルを務めた。彼は2018年3月4日に71歳で死去している。また、創設メンバーのうちドラマー、ギタリスト、そしてルシンスキの3人が2016年から2018年の2年間で相次いで亡くなったという。
こうした経緯を踏まえると、Ertlifは単なる再結成バンドではなく、メンバーの入れ替わりを経ながら歴史そのものを引き継いできたグループとして見たほうが自然だ。
Ertlifは、1970年代初頭のスイス・プログレの文脈の中で始まり、長い活動停止期間をはさんで再び動き出したバンドだ。音楽面では、サイケデリック・ロックとプログ・ロックを土台にしながら、当時の機材やステージ演出も含めて時代性のある動きを見せていた。現在もバンド名は残り、活動は続いている。