Ertlif - Relics From The Past: Unreleased Recordings 1974-1975 (2017)
Ertlif 2017

Ertlif - Relics From The Past: Unreleased Recordings 1974-1975 (2017)

Rock Psychedelic Rock Prog Rock

Ertlif『Relics From The Past: Unreleased Recordings 1974-1975』について

スイスのプログレッシブ・ロック・バンド、Ertlifが1974年から1975年に残した未発表音源をまとめた編集盤が、2017年にヨーロッパのSommorから登場したのが本作『Relics From The Past: Unreleased Recordings 1974-1975』だ。Ertlifはバーゼルで1970年に結成されたグループで、70年代初頭からスイスのプログレ/サイケ・シーンで存在感を持っていたバンド。本作は、そうした活動期の中でも、正式なアルバムとしては表に出なかった74〜75年の録音を初めてまとめて聴ける形にしたアーカイブ盤である。

収録内容は4曲で、中心になるのは20分を超える「Edgar Flee」。さらに「Camargue」「Distorted Dreams」など、当時のバンドの方向性を示すトラックが並ぶ。バンド側の案内では、ファズの強いギター、ハモンド、メロトロン、シンセを前に出した、生々しいハード・プログレ的な音像として紹介されている。実際、この作品の性格は“完成された名盤”というより、スタジオやホーム録音の息づかいをそのまま残した記録物に近い。

作品の位置づけ

Ertlifは、スイス初期プログレを語るうえで名前の挙がるバンドのひとつだ。1970年代前半のヨーロッパでは、英国勢の影響を受けたハード寄りのプログレやサイケが各地で育っていたが、Ertlifもその文脈にいる。Deep Purple、Atomic Rooster、Black Sabbath、Cressida、Ainigma、Necronomicon、Pacific Soundといった名前が関連アーティストとして挙げられているのも、その音の輪郭を示している。つまり、本作はバンドの“後年の再評価”というより、70年代当時の未公開資料を掘り起こした性格が強い。

この録音群は1974年と1975年に分かれており、バンドがよりリズミカルでギター主導の方向へ進んでいた時期の断片として聴ける。1972年の正式デビュー期とは少し違う、より荒く、直接的な演奏感が前面に出るのがこの編集盤の見どころだ。タイトル通り「過去からの遺物」というより、当時のスタジオの空気をそのまま閉じ込めた記録に近い。

音の印象

この盤の特徴は、音の密度と楽器の押し出しの強さにある。ギターはかなり前面に出ており、ファズとワウの質感がはっきりしている。そこにハモンドやメロトロン、シンセが重なり、70年代中盤らしい厚みを作る。英語ヴォーカルも力強く、全体としては整いすぎないぶん、バンドの演奏の輪郭が見えやすい。大作「Edgar Flee」のような長尺曲では、展開の積み重ねとリフの反復が印象に残る構成だ。

一方で、同時代の一線級プログレと比べると、洗練よりも現場感が立つ。Planet Mellotronでは、70年代半ばの基準ではやや時代遅れに聴こえるとしつつ、いくつかの曲に聴きどころがあると触れている。そうした評価も含めて、この作品は“完成度の高さ”より“発掘された事実”に価値が置かれている盤だ。

再発盤としての特徴

2017年盤は、厚手のラミネート加工が施された見開きジャケット仕様で、バンドのTeddy Riedoによるライナーノーツや、レア写真、資料も付く。オリジナルの未発表テープをErocがMastering Ranchでリマスターし、SST Brüggemannでラッカーカットされたというクレジットもある。単なる音源の寄せ集めではなく、アーカイブ盤として丁寧に作られているのがわかる。

また、バック・カバーには、A面のA1〜A3が1974年録音、B面が1975年録音と明記されている。アルバム全体としては、発掘音源の年代差をそのまま収めた構成で、制作時期の違いを確認しながら聴けるのも面白い点だ。加えて、この盤はギタリストの[a1773622]に捧げられている。

Ertlifというバンドの文脈

Ertlifは、1971年に注目を集め、1972年には短期間でLPを録音して話題になった後、メンバー交代を経ながら活動を続けたバンドだ。その後、1974〜75年の時期には、よりハードでギター中心のアプローチへ寄っていく。本作は、その変化の途中にある録音を後年の目でまとめたものになる。バンドの歴史を追う資料としても、当時のスイス・プログレの一断面としても、位置づけははっきりしている。

商業的なヒット作ではなく、長く埋もれていた録音を掘り起こした編集盤。その性格がそのまま作品の価値になっている。Ertlifの活動史を補う一枚として、70年代のヨーロッパ地下シーンの空気を残す記録として、静かに存在感を持つ作品だ。

トラックリスト

  1. A1 Figments Of My Mind 11:55
  2. A2 Camargue 5:29
  3. A3 Distorted Dreams 4:51
  4. B Edgar Flee 20:48

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
Share
戻る

あわせて聴きたい "Psychedelic Rock"

toast