Vinyl Record Reviews
Gary Higginsは、アメリカ・コネチカット州シャロン生まれのシンガーソングライター。ジャンルはRock、Folk、World、& Countryにまたがり、スタイルとしてはPsychedelic Rock、Acoustic、Folk Rockが挙げられている。
1972年、Gary Higginsは複数のバンドメンバーとともにアルバム『Red Hash』を録音した。収録曲はGary自身が書いたもので、制作時点では本人が薬物関連の罪で服役することが決まっていた時期だった。収監されれば流通の準備が難しくなる状況の中で作られた作品として知られている。
このアルバムは当初ごく少数プレスにとどまり、すぐに広く流通することはなかった。タイトルも本人の意向ではなかったとされている。
『Red Hash』は長く忘れられたあと、1990年代に入ってから少しずつ再評価が進んだ。Current 93のDavid Tibetや、Six Organs of AdmittanceのBen Chasnyのようなリスナーの間で支持を集め、Chasnyは自身の作品で収録曲「Thicker Than a Smokey」をカバーしている。
さらに、レコードがロシアに渡り、無許可でCD化された海賊盤がアメリカに逆流する形で広まったことも、この作品の存在を再び知られるきっかけになった。
2004年、Drag CityのスタッフとBen Chasnyが海賊盤を手がかりにGary Higginsの所在を探し、コネチカット州の電話帳を頼りに本人を見つけた。こうして2005年、Drag Cityから『Red Hash』が正式に再発された。再発盤はオリジナル・ミックスを使い、新曲2曲を加えた内容で、当時のLPアートワークも含めてリリースされている。
この再発によってGary Higginsは国内外で広く注目されるようになった。
2008年には、新録を含む2作目のアルバム『Seconds』を同じDrag Cityから発表している。『Red Hash』の再発以後も、Gary Higginsの作品はこの流れの中で紹介されている。
Gary Higginsの作品は、フォークを軸にしながら、サイケデリック・ロックやフォーク・ロックの要素を含む形で語られている。アコースティックな手触りと、1970年代初頭らしいロックの感触が同居している点が特徴として挙げられる。
『Red Hash』は、当初のリリースでは大きく広がらなかった一方で、後年になってから聴き手の間で存在が共有され、再発盤を通じて改めて届いた作品として扱われている。
Gary Higginsをたどると、70年代に録音された1枚のアルバムが、海賊盤や再発、支持者の掘り起こしを経て再び表に出てきた流れが見えてくる。『Red Hash』を中心に、その活動歴が今も語られているアーティストだ。