Vinyl Record Reviews
Godley & Cremeは、10ccのメンバーだったLol CremeとKevin Godleyによるデュオだ。1977年に2人で活動を始め、電子音楽、ロック、レゲエをまたぐ作風で作品を残した。スタイルとしてはプログレッシブ・ロックやアート・ロックの文脈で語られることが多い。
2人が10ccを離れた直接のきっかけは、自作のギター用サステイン装置「Gizmo」の開発に専念するためだったとされる。Gizmoは、モーターで回る小さなホイールを弦に当てて、ヴァイオリンのボウイングに近い持続音を出す仕組みだ。
このGizmoのデモンストレーション作品として制作されたのが、3枚組の大作『Consequences』(1977年)だった。作品は会話を含む劇仕立ての構成で、コメディアンのPeter Cookが全キャラクターの声を担当し、Sarah Vaughanも参加している。発表時期がパンクの全盛期と重なったこともあり、当時の批評家からは厳しい評価を受けた。
Godley & Cremeの音楽は、10cc時代のスマートなポップ感を引き継ぎつつ、実験的な要素を前に出したところに特徴がある。Gizmoのような独自機材を使った音作りは、そのまま彼らのサウンドの個性になった。ロックを土台にしながら、電子音やレゲエの要素も取り込み、曲ごとにアレンジの方向が変わる。
活動後期には、シングル「Cry」(1985年)が代表曲のひとつとして知られる。この曲はBillboard Hot 100で16位、UKシングルチャートで19位を記録した。10cc在籍時を除けば、全米で唯一のトップ40ヒットになっている。
2人は音楽活動と並行して、ミュージックビデオの制作でも存在感を示した。1979年に初めてビデオ監督を手がけて以降、Ultravox、The Police、Yes、Duran Duran、Frankie Goes to Hollywood、Wang Chungなど、幅広いアーティストの映像作品を担当している。
特に「Cry」のビデオでは、人物の顔が溶けるように別の顔へ切り替わっていくモーフィング的な手法を使っている。この映像は当時の音楽ビデオとして注目された。さらに、Herbie Hancockの「Rockit」のビデオ制作にも関わっていて、ロボット風のアートワークを使った映像でも知られている。
Godley & Cremeの共同作業は1988年に終わった。その後、2人は別々の道を歩むことになる。短い期間のデュオ活動だったが、Gizmoを軸にした実験性、劇仕立ての大作、そして映像制作まで含めた動きで、単なる元10ccの派生ユニット以上の役割を持っていた。