Godley & Creme - Freeze Frame (1979)
Godley & Creme『Freeze Frame』について
『Freeze Frame』は、1979年にUS盤としてPolydorから出たGodley & Cremeの3作目のアルバム。元10ccのケヴィン・ゴドリーとロル・クレームによるデュオ作品で、前作までの実験色の強い流れを受けつつ、より曲としての聞きやすさを前に出した一枚として位置づけられている。レーベル表記はPolydor Inc.、カタログ番号はPD-1-6257。US盤ではあるが、制作の空気感はイギリス勢らしい細部の作り込みが強く出ている。
10cc脱退後のデュオ、第3作という位置づけ
Godley & Cremeは、もともと10ccの中でも個性の強い2人として知られた存在で、1977年にデュオとして活動を始めた。1作目『Consequences』は台詞入りの大作コンセプト盤で、かなり特殊な構成だった。その後に出た本作『Freeze Frame』では、そうした大掛かりな実験を踏まえつつ、ポップソングとしての輪郭がはっきりしている。完全に平易になったわけではなく、構成や音の置き方にはまだひねりが残るが、前2作に比べるとアルバム全体の入口は広い。
この時期の英ロック周辺では、アート・ロック、プログレッシブ・ロック、ニューウェイヴの境目がかなり揺れていた。Godley & Cremeもその境界線上にいて、曲の骨格はポップ寄りでも、アレンジには細かな仕掛けが多い。電子音、ギター、レゲエ的なリズム感が同居しているのも、この時代らしい混ざり方だ。
Gizmoの存在感と音の個性
本作でまず目を引くのが、2人とジョン・マコーネルが開発した独自装置「Gizmo」の使用。ギターの弦に回転するホイールを触れさせて持続音を出す仕組みで、弓で弾いたような質感を作る。この装置は後の作品でも知られるが、『Freeze Frame』では曲の輪郭を少し変える要素としてかなり重要だ。ロル・クレームがその操作を担い、普通のギター録音とは違う粘りのある音像を作っている。
実際に聴くと、音の隙間の使い方がうまい。派手に音数を増やすのではなく、要所で妙な響きを差し込んで、曲の空気を少しずつずらしていく感じがある。プロダクションは整っていて、奇抜さよりも整理された違和感に寄っている印象だ。
代表曲「An Englishman In New York」
シングル曲として知られる「An Englishman In New York」は、このアルバムを語るうえで外せない。イギリス人の視点からアメリカ文化を皮肉を交えて描く内容で、タイトルどおりの都会的な視線が通っている。ミュージックビデオでも話題になり、1930年代のビッグバンド風の演出にマネキンが登場するセルフプロデュース作品として記憶されている。音だけでなく映像まで含めて作り込む姿勢は、のちのGodley & Cremeの活動を先取りしている。
もう一つ知られているのが「Get Well Soon」。この曲にはポール・マッカートニーがバッキング・ヴォーカルで参加している。クレジット上の話題性だけでなく、アルバムの中で曲を支える厚みのある要素として働いている。
US盤の仕様と当時の記録
今回のUS盤は1979年のオリジナル期のリリースで、ジャケット内袋には歌詞とクレジットが画像で掲載されている。制作や作曲以外の情報が視覚的にまとめられているあたりも、作品全体のデザイン意識を感じる部分だ。盤には「26」のプラントコードと、ランアウト部の「PRC」刻印があり、USプレスであることが示されている。ランアウトは基本的にエッチングで、「MASTERDISK」のみ別処理。こうした情報は、当時のアメリカ盤らしい製造面の手がかりになる。
また、©表記は1979年のPolydor Inc.、作曲権はMan-Ken Music Ltd.。Polydorはこの時期、すでに国際的な大手レーベルとして機能していて、US市場でもこのデュオ作品をしっかり流通させていた。1970年代末のPolydorは、ロック、ポップ、ディスコ、ニューウェイヴの間をまたぐ作品を多く抱えていたが、本作もその中で独特の位置を占める一枚だ。
1979年という時代の中で
1979年は、プログレ的な長尺志向が一段落し、曲単位の強さや映像との結びつきがより重要になっていった時期。Godley & Cremeはその流れの中で、10cc時代から続く緻密なポップ感覚と、実験的な録音・演出を両立させようとしている。本作には、単なる技巧だけではない、楽曲の輪郭を残したまま音の見せ方を変える工夫がある。アート・ロックやプログレの文脈で見ても、70年代末の英国的な職人肌の作り込みがよく出たアルバムとしてまとまっている。
Godley & Cremeの作品群の中では、極端なコンセプト作と、その後のポップ志向の中間にある一枚。大げさな説明をしなくても、曲の端々に2人の発想の癖が見えるアルバムで、10cc周辺の系譜をたどるうえでも外しにくい存在だ。
トラックリスト
- A1 An Englishman In New York 5:33
- A2 Random Brainwave 2:37
- A3 I Pity Inanimate Objects 5:21
- A4 Freeze Frame 4:45
- B1 Clues 5:22
- B2 Brazilia (Wish You Were Here) 6:06
- B3 Mugshots 3:53
- B4 Get Well Soon 4:35