Vinyl Record Reviews
Harris Chalkitisは1945年にエジプトのカイロで生まれた作曲家、編曲家、シンガー、マルチ・インストゥルメンタリストだ。幼少期に家族とともにギリシャへ移住し、その後はギリシャの音楽シーンで活動を広げた。2024年にギリシャで亡くなっている。
Chalkitisの活動は、作曲と編曲を軸にしながら、歌唱や演奏、プロデュースまで広く及んでいる。1970〜80年代にはDemis Roussosの作品をいくつも手がけ、ツアーにも同行していたとされる。裏方として長く関わりながら、特定のアーティストの作品づくりに深く入っていたタイプの音楽家だ。
そのほかにも、Mireille MathieuやDalidaのために楽曲を書いている。ジャンル面ではロック、ポップ、ジャズ、フォーク、ワールド、ファンク/ソウルまで幅があり、プロフィール上ではProg Rock、Jazz-Rock、Disco、Jazz-Funkが挙げられている。
ウェブ上の情報では、Chalkitisは後にパリへ拠点を移し、そこでディスコ・ユニットQueen Samanthaのプロジェクトを進めた。リード・ヴォーカルにはシカゴ出身のGloria Brooksを迎え、カバー曲「The Letter」を除く多くの楽曲をChalkitisと妻Myriamが共作している。作品はフランスのAtoll Recordsから出されている。
Queen Samanthaでは「Mama Rue」が大きなヒットになり、その後も「Funky Celebration」(1980年)、「Give Me Action」(1982年)、「Close Your Eyes」(1983年)などがチャートに入った。こうした流れから、Chalkitisはフレンチ・ディスコからブギーへ移る時期の制作にも関わっていた。
公開されているクレジットを見ると、Chalkitisは単独のシンガーというより、曲作りとアレンジ、プロデュースをまとめて担うタイプの音楽家として動いていたことがわかる。Demis Roussosのポップ・ソング、Queen Samanthaのディスコ作品、そしてMireille MathieuやDalidaのための楽曲と、関わる相手によって役割を変えている。
ジャンルの広さも特徴だ。プログレ寄りのロック、ジャズを含むロック、ディスコ、ジャズ・ファンクといった要素が並んでいて、ひとつの型に収まる活動ではない。特に1970〜80年代のヨーロッパのポップス/ディスコの現場で、作曲家・編曲家として複数のプロジェクトを支えた人物として見ておくと整理しやすい。
Chalkitisの名前で作品を追うなら、まずはDemis Roussos関連の楽曲とQueen Samanthaのシングルを並べて聴くと、仕事の幅が見えやすい。前者ではポップスの中での構成力、後者ではディスコやブギーのビート感とメロディの作り方が確認できる。
派手に前面へ出るタイプではないが、制作側からヨーロッパのポップス/ディスコの流れを支えた人物として、Harris Chalkitisの仕事は追いかける価値がある。