Vinyl Record Reviews
Inner Circleは、1968年にジャマイカのキングストンで結成されたレゲエ・グループだ。中心になったのは、兄弟のイアン・ルイスとロジャー・ルイスで、ギターとベースを担当した。そこに、キーボードのバーナード “タウター” ハーヴィーや、のちにリード・シンガーとなるジェイコブ・ミラーらが加わり、バンドの初期の形ができていく。
Inner Circleが国際的に注目されたのは、1970年代後半の編成だ。ジェイコブ・ミラーの歌と、ハーヴィーのキーボードを軸にした時期で、親マリファナ・反コカインのメッセージを掲げた「Mary Mary」が知られている。1979年から1980年にかけては、アイランド・レコードからゴールド・アルバム『Everything Is Great』を発表し、活動のピークを迎えた。
この時期の演奏は、レゲエを土台にしながら、ロックンロールやファンク、ソウルの要素も取り込んでいた。プロフィール情報では、Rock & Roll、Disco、Roots Reggaeがスタイルとして挙がっていて、実際にそうした混ざり方がバンドの特徴として見えてくる。
1980年3月23日、ジェイコブ・ミラーはキングストン市内での自動車事故で27歳で亡くなった。これはInner Circleにとって大きな転機だった。ミラーの死後、バンドはアイランド・レコードとの契約を失い、その後10年以上にわたって商業的に苦しい時期が続く。
この間も活動自体が完全に止まったわけではないが、少なくとも大きなヒット面では沈黙が長くなった。70年代後半の勢いをそのまま維持するのは難しかったようだ。
再び大きく名前が広がったのは1992年の「Sweat (A La La La La Long)」だ。ヨーロッパ各国でトップ10入りし、スイスとドイツでは1位を記録している。Inner Circleにとっては、長い停滞のあとに戻ってきた大きなヒットだった。
その流れで、1987年に発表していた「Bad Boys」も1993年に再リリースされた。この曲はアメリカのテレビ番組『Cops』のオープニング・テーマとして使われ、さらに1995年公開の映画『バッド・ボーイズ』の主題歌としても知られるようになった。全米チャートでは8位を記録していて、90年代のInner Circleを代表する楽曲になっている。
Inner Circleの音楽は、ルーツ・レゲエを軸にしつつ、ロック寄りの推進力や、ファンク、ソウル、ディスコの要素を組み込んでいる点がポイントだ。初期の「Mary Mary」や『Everything Is Great』では、メッセージ性のある歌詞と、演奏のまとまりが前面に出ている。
一方で、90年代の「Sweat」や「Bad Boys」では、より広い層に届く分かりやすいフックが目立つ。レゲエのリズムを保ちながら、ポップスやダンス曲としても機能する作りになっていて、ここが長く聴かれている理由の一つになっている。
Inner Circleは、長い活動歴の中でメンバーの入れ替わりが多い。プロフィールには、ジェイコブ・ミラー、イアン・ルイス、ロジャー・ルイス、バーナード “タウター” ハーヴィーをはじめ、ブルース・ラフィン、ウィリー・スチュワート、マイケル・スターリング、スティーヴン “キャット”・クーア、カルトン・コフィーなど、多くの名前が並んでいる。
特にルイス兄弟は結成時から中心にいて、バンドの土台を支えてきた存在だ。編成が変わっても、彼らを軸にグループが続いてきたことが、Inner Circleの歴史を追ううえで重要になる。
Inner Circleは、70年代後半のジャマイカン・レゲエの流れと、90年代のポップ・ヒットの両方で知られている。前者では「Mary Mary」や『Everything Is Great』、後者では「Sweat」と「Bad Boys」が代表曲として挙がることが多い。
レゲエの文脈ではもちろん、映画やテレビ番組を通じて曲が広まった点も大きい。特に「Bad Boys」は、音源としてだけでなく、映像作品との結びつきでも記憶されている。