Vinyl Record Reviews
Ivor Cutlerは、1923年にグラスゴーで生まれ、2006年にロンドンで亡くなったアーティストだ。音楽家としてはRockの文脈で語られることがあるが、実際には詩人、シンガー、ソングライター、ストーリーテラー、放送人、作家、教師としても活動していた。ひとつの肩書きに収まりにくい人物で、演奏だけでなく言葉を使った表現でも知られている。
Cutlerの音楽は、AbstractやMinimalといったタグで整理されることが多い。実際のパフォーマンスでは、ハーモニウムを弾きながら歌う形がよく知られている。派手な編成よりも、言葉の運びや間の取り方、短いフレーズの反復が前に出るタイプの表現だった。
BBCラジオ、特にJohn Peelの番組に何度も出演している。The Fallを除けば、Peelの番組に最も多くセッション出演したアーティストとされている。ラジオを通じて継続的に紹介されたことで、一般的なロック・シーンの枠を少し外れた場所で存在感を持ち続けた。
BBCのテレビ番組『Late Night Line-Up』への出演がきっかけでPaul McCartneyの目に留まり、1967年公開のThe Beatles主演映画『Magical Mystery Tour』にバスの車掌Buster Bloodvessel役で出演した。この役名は、後にスカバンドBad Mannersのフロントマンがステージネームとして使ったことでも知られている。
The Beatlesとの接点は、Cutlerが単なるカルト的人物としてだけでなく、当時のポップ・カルチャーの周辺でも見られていたことを示している。音楽活動だけでなく、映像やテレビの場でも印象を残した。
Cutlerの作品は、風変わりなユーモアと、身の回りの事物に向けた観察で成り立っている。大げさな感情表現よりも、短い語りや小さな発見を積み重ねる作りが目立つ。聴き手を強く引っ張るというより、言葉のズレや視点の変化をそのまま見せるタイプだ。
こうした作風は、世代をまたいでファンを集めた背景にもつながっている。哲学者Bertrand Russell、BeatlesのJohn LennonとPaul McCartney、John Peelなど、幅広い層に支持者がいたことが記録されている。
Cutlerは児童書や大人向けの詩集も書いている。文章の仕事と音楽活動が別々ではなく、互いに近い場所にあった人物だ。さらに、A. S. Neillが創設したSummerhill Schoolで教え、ロンドンの都市部の学校でも30年にわたって教職に就いていた。音楽と教育を並行して続けていた点も特徴的だ。
40年以上にわたる活動のなかで、Cutlerは演奏者、語り手、作家、教師としてそれぞれ足跡を残した。82歳で舞台を退き、その後はアルツハイマー病と体調不良を経て、2006年3月3日に83歳で亡くなっている。
ロックの文脈で紹介されることはあっても、実際のIvor Cutlerは、歌と語り、教育と執筆を行き来しながら活動した人物だ。作品を聴くときは、音楽だけでなく、言葉の使い方や語りのリズムにも目を向けると入りやすい。