Vinyl Record Reviews
Jah Wobbleは、1958年8月11日生まれのロンドン・ステップニー出身のベーシスト、シンガー、詩人、作曲家だ。名前の「Jah Wobble」は、本名のJohn Wardleを友人のSid Viciousが酔って崩して呼んだことに由来する。
活動の出発点は、Sex Pistols解散後の1978年5月にJohn Lydonが結成したPublic Image Limited(PiL)への参加だ。Wobbleは結成メンバーとしてベースを担当し、デビュー・シングル「Public Image」ではシンプルな反復ベースラインを書いた。この曲は全英9位を記録している。続く『Public Image: First Issue』(1978年)と『Metal Box』(1979年)では、ベースに加えてドラムも担当し、作曲クレジットも得た。
PiL在籍時のWobbleは、ダブやレゲエ由来の重低音を前面に出したベースで存在感を示した。本人は、1975年に見たBob Marleyのバンドのベーシスト、Aston “Family Man” Barrettから影響を受けたと語っている。この低音主体の作りは、その後の活動でも続く特徴になっている。
一方で、バンド内では創造面での停滞やメンバーとの軋轢が深まり、1980年末にPiLを解雇された。『Metal Box』の素材を使って無断でソロ作品を制作したことも、その背景の一つとして挙げられている。
PiL脱退後は、ソロ活動を軸に多くの録音と共演を重ねている。1983年には、Can出身のHolger CzukayとU2のThe Edgeと共作したEP『Snake Charmer』を発表した。1995年にはBrian Enoとの共作アルバム『Spinner』をリリースしている。
そのほかにも、Sinéad O'Connor、Baaba Maal、Dolores O'Riordanらとの共演がある。ジャンルの枠に固定されず、異なる背景の音楽家と組んでいく動きが目立つ。
PiL脱退後に立ち上げたプロジェクト「Invaders of the Heart」名義でも活動している。『Rising Above Bedlam』(1991年)、『Take Me to God』(1994年)はこの名義で出された作品で、商業的にも成功した。2016年にはTony Allenらを迎えて同名義を復活させている。
Jah Wobbleの音楽は、Electronic、Jazz、Funk / Soulを軸に、Fusion、Dub、Leftfield、Jazzdance、Free Funkといったスタイルにまたがる。PiL時代から続くダブ的な低音処理を土台にしながら、アンビエント、ダンス・ミュージック、ワールド・ミュージック寄りの展開も取り入れてきた。
ワールド・ミュージックの探求は、そのジャンルが広く注目される前から進めていたとされる。2003年には、イングランドの伝承曲を再解釈した作品も発表している。1990年代半ば以降は特に制作数が多く、活動の密度が上がっている。
Wobbleは自身のレーベル30 Hertz Recordsを運営し、イングランドやヨーロッパで定期的にツアーを行っている。音楽活動の前にはロンドン地下鉄で長く働いており、その後Birkbeck, University of Londonで人文学を学んで2000年に優等学位を取得した。
音楽家としては、PiLの初期を支えたベーシストであり、その後はソロ、ユニット、共作を行き来しながら、低音を軸にした独自の仕事を積み重ねてきた人物として整理できる。現在も公式サイトやBandcampで作品を確認できる。
Jah Wobbleの活動を追うと、パンク以後のポストパンク、ダブ、ジャズ、エレクトロニックの交差点で、ベースという楽器がどこまで前に出られるかを試し続けてきた流れが見えてくる。