Vinyl Record Reviews
Julia Holterは、1984年12月18日生まれのアメリカ人シンガー・ソングライター/マルチインストゥルメンタリストだ。出身はウィスコンシン州ミルウォーキー。ジャンル情報ではRock、Pop、スタイルとしてIndie Popに分類されることが多いが、実際の活動では実験音楽や作曲の要素も強く出ている。
彼女はミシガン大学でクラシックピアノと作曲を学び、その後、カリフォルニア芸術大学(CalArts)で音楽のMFAを取得している。クラシックの訓練と現代音楽寄りの教育を受けたうえで、アルバムやミックス、カセット作品を重ねながら、ソングライターとしての形を作っていった。
この経歴を見ると、単に歌を中心にしたシンガーではなく、作曲や編曲の発想を前提に作品を組み立てるタイプのアーティストとして活動してきたことが分かる。
2013年の『Loud City Song』は、1958年の映画『Gigi(邦題:恋の手ほどき)』にゆるやかに着想を得たコンセプトアルバムとして知られている。バロック・ポップ的な整理された構成と、前衛的な音作りを同じ作品の中で扱っている点が特徴だ。
続く2015年の『Have You in My Wilderness』では、はっきりした物語を前面に出す形ではなく、より内省的で親密な曲作りへと向かっている。プロデューサーのコール・マーズデン・グレイフ=ネイルと制作し、それまでの作品で目立っていたエフェクト処理の強いヴォーカルから、歌声そのものをミックスの中心に置く方向へ変化している。内容面では、愛、信頼、人間関係の力学といったテーマが扱われている。
Julia Holterの音楽は、前衛音楽の要素とポップスとしての聴きやすさの間を行き来するところに特徴がある。メロディーの分かりやすさだけで押し切るタイプではなく、ピアノ、アレンジ、音の重なり方に耳が向く作りになっている。
また、クラシックや作曲のバックグラウンドがあるためか、曲の展開や音の配置に細かな設計が見える。とはいえ、難解さだけに寄るわけではなく、インディー・ポップのリスナーにも届く入り口を保っている。
『Loud City Song』や『Have You in My Wilderness』を通して、Julia Holterは実験音楽寄りのリスナーとインディー・ポップのリスナーの両方から注目を集めてきた。作品ごとに手触りを変えながらも、作曲の精度と歌の存在感を両立させている点が評価されている。
公開されている関連サイトも多く、公式サイトのほか、Facebook、Twitter、Instagram、SoundCloud、YouTube、NTSのアーティストページなどで活動を追うことができる。レーベルのDomino Record Co.や、各種メディアのアーティストページでも紹介されている。
Julia Holterは、ポップソングの枠組みを使いながら、その中に作曲家としての視点を持ち込むアーティストだ。アルバムごとの方向性も少しずつ変わるので、作品単位で聴くと違いが分かりやすい。