Labi Siffre

Vinyl Record Reviews

Labi Siffre

Labi Siffreについて

Labi Siffreは、1945年6月25日にロンドン・ハマースミスで生まれたイギリスのボーカリスト、ミュージシャン、アーティストだ。ロンドンで育ち、母はイングランド系、父はナイジェリア系。若い時期にはミニキャブの運転手や配達の仕事をし、その後に音楽へ軸足を移した。

その後、フランスのカンヌへ渡ってソウル系のミュージシャンやバンドとギターを弾き、60年代後半にイギリスへ戻って本格的にソロ活動を進めている。活動歴を見ると、シンガーとしてだけでなく、演奏家、作詞作曲家としての顔もはっきりしている。

70年代のヒットとソングライターとしての存在感

1971年には「It Must Be Love」と「Crying, Laughing, Loving, Lying」がヒットした。「It Must Be Love」はのちにMadnessがカバーしている。1972年の「Watch Me」もヒット曲として知られ、70年代の時点でソロ・アーティストとしての地位を築いていた。

作品の流れを見ると、フォークやソウルを土台にした歌作りが中心にある。派手な装飾よりも、メロディと歌詞を前に出すタイプの音楽で、曲ごとのテーマがはっきりしている。

(Something Inside) So Strong と社会的メッセージ

Labi Siffreを語るうえで外せないのが「(Something Inside) So Strong」だ。これは1984年、南アフリカのアパルトヘイトを扱ったテレビ・ドキュメンタリーに衝撃を受けて書かれ、1987年のシングルとして発表されると全英チャート4位を記録した。さらにアイヴァー・ノヴェロ賞の作詞・作曲部門も受賞している。

この曲は、ロザ・パークスへの追悼、アムネスティ・インターナショナルのキャンペーン、アリス・ウォーカーによる女性性器切除反対の映画『Warrior Marks』でも使われている。人権に関わる場面で繰り返し参照されてきた楽曲として定着している。

本人は2014年になって、この曲がアパルトヘイトだけでなく、自身が同性愛者として少年期から経験してきたことにも根を持つと明かしている。社会問題と個人の経験が重なる形で書かれた曲として受け取られている。

再評価された楽曲と後世への影響

90年代以降は、別の世代からもLabi Siffreの曲が注目されるようになった。1975年のアルバム収録曲「I Got The Breaks」が、Eminemの1999年のブレイク曲でサンプリングされたことがきっかけのひとつになっている。ここから、彼の音楽がヒップホップやサンプリング文化の中でも参照されるようになった。

こうした流れを見ると、Labi Siffreの作品は当時のヒット曲としてだけでなく、後年のアーティストやリスナーに掘り返される素材としても機能している。ソウル寄りのグルーヴ、フォーク寄りの語り口、そして歌詞の主題の強さが、時代をまたいで扱われている印象だ。

私生活と現在の活動

私生活では、1964年にパートナーのピーター・ロイドと出会い、イギリスでシビル・パートナーシップ制度が始まった直後の2005年12月に正式にパートナー登録を行っている。2人の関係は49年間続き、ロイドは2013年に亡くなった。この長い関係は、英国における同性愛者の権利運動に関わる文脈でも語られている。

近年のLabi Siffreは、詩作にも力を入れている。内容はゲイの権利や社会問題に関わるものが中心で、音楽活動と地続きの表現として続いている。現在も公式サイトやSNS、YouTube、SoundCloudなどで作品や情報に触れられる。

関連リンク

toast