Labi Siffre - Crying Laughing Loving Lying (1972)
Labi Siffre 1972

Labi Siffre - Crying Laughing Loving Lying (1972)

Folk, World, & Country Funk / Soul

Labi Siffre『Crying Laughing Loving Lying』レビュー

1972年にUKのPye Internationalから出たLabi Siffreの『Crying Laughing Loving Lying』は、ソウル寄りの歌唱と、フォークや英国ポップの感触が同居した1枚だ。Labi Siffreは1945年生まれのロンドン出身シンガー/ソングライターで、1960年代末からソロ活動を本格化させ、1971年に「It Must Be Love」と本作の表題曲で知られるようになった人物である。後年は「(Something Inside) So Strong」でも広く認知されるが、この時期の作品には、ヒット曲の印象だけでは収まらない、落ち着いた筆致と芯のある歌が残っている。

本作はタイトル曲「Crying, Laughing, Loving, Lying」を含む時期のアルバムで、Labi Siffreの1970年代前半の立ち位置をそのまま映すような内容だ。Pye InternationalはUK向けのライセンス盤や国際色のあるカタログで知られるレーベルで、この作品もその流れの中に置かれている。UKのシンガーソングライター作品として見ても、同時代のCat StevensやDonovanのような語り口を思わせる場面がありつつ、声の置き方やリズムの運びにはソウル・シンガーとしての感覚が前に出る。

作品の位置づけ

Labi Siffreにとって1972年は、初期キャリアの実績を固めていた時期にあたる。前年の「It Must Be Love」は後にMadnessがカバーして再評価されるが、本人のオリジナルには、流行に寄せすぎない作りが通っている。本作でもその傾向は変わらず、メロディの分かりやすさと、歌詞の視点の距離感が近い。大きな装飾で押すタイプではなく、声と曲の骨格で聴かせる構成だ。

また、Labi Siffreの作品は、のちにEminemが「I Got The...」をサンプリングしたことで新しい世代にも届いたが、このアルバムはそうした後年の文脈とは別に、1970年代初頭の英国シンガーソングライター/ソウルの接点としてそのまま聴ける。派手な編曲よりも、歌のニュアンスや言葉の置き方が中心にあるため、アルバム単位でのまとまりが見えやすい。

注目曲「Crying, Laughing, Loving, Lying」

表題曲「Crying, Laughing, Loving, Lying」は、Labi Siffreの代表曲としてまず挙がる1曲だ。タイトルの通り感情の振れ幅を並べた曲名だが、実際の歌は大仰になりすぎず、淡い抑制の中で感情を積み上げていく。ヒット曲らしい分かりやすいフックがありつつ、歌声はどこか静かなままで、その落差が印象に残る。ソウルの熱量を前面に出すというより、英国のシンガーソングライターらしい整理された語り口で進むのが特徴的だ。

この曲は、Labi Siffreの初期代表作としても重要で、彼の名前を広く知らしめた一方、後の再評価でも外せない存在になっている。実際に聴くと、サビのメロディだけでなく、言葉の切り方やフレーズの間合いに耳が向く。派手な展開がなくても最後まで持続するのは、曲そのものの設計がしっかりしているからだろう。1971年のシングルとして先行していたこともあり、アルバムの中では軸になる曲として機能している。

アルバム全体の聴きどころ

『Crying Laughing Loving Lying』は、1曲だけが目立つ作品というより、全体を通して声の存在感が残るアルバムだ。フォーク寄りの手触りがある場面でも、リズムの取り方にはソウルの感覚があり、単純にどちらかへ分類しにくい。そこがLabi Siffreらしさでもある。英国のソングライターとしての端正さと、R&B的な身体感覚が同じフレームに収まっている。

同時代のUKアーティストでいえば、内省的なソングライティングを持つ人たちと並べて語られることが多いが、Labi Siffreはその中でも声質とフレーズの置き方に独特の重心がある。歌が前へ出るたびに、曲の輪郭が少しずつ見えてくるタイプで、アルバムを通すとその一貫性が分かりやすい。華やかなスタジオ作品というより、歌そのものを中心に据えた記録として受け取れる1枚だ。

まとめ

『Crying Laughing Loving Lying』は、Labi Siffreの初期代表曲を抱えた1972年作として、彼のキャリアの中でも分かりやすい位置にある。UKのソウル/フォーク/シンガーソングライター作品として聴くと、時代の空気と個性の両方が見えやすい。表題曲の存在感はもちろん、アルバム全体に通る落ち着いた歌唱と、言葉を丁寧に運ぶ感覚が、この時期のLabi Siffreを端的に示している。

トラックリスト

  1. A1 Saved 2:00
  2. A2 Cannock Chase 3:57
  3. A3 Fool Me A Good Night 3:30
  4. A4 It Must Be Love 3:42
  5. A5 Gimme Some More 2:50
  6. A6 Blue Lady 5:00
  7. B1 Love Oh Love Oh Love 4:22
  8. B2 Crying, Laughing, Loving, Lying 2:50
  9. B3 Hotel Room Song 2:50
  10. B4 My Song 4:30
  11. B5 'Till Forever 1:08
  12. B6 Come On Michael 2:50

動画

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