Vinyl Record Reviews
Les Maledictus Soundは、フランスのプロデューサー、ジャン=ピエール・マシエラが1968年に手がけたコンセプト・プロジェクトだ。プロフィール上は「French musique concrète psychedelic concept group」とされていて、実際に残したアルバムは1枚だけ。メンバー欄には複数の名前が並ぶが、中心にいたのはマシエラだ。
ジャン=ピエール・マシエラは1941年にニースで生まれ、アルゼンチンで育った人物で、1967年に故郷ニースで自身のスタジオ「Studio d'Enregistrement Méditerranéen(SEM)」を設立した。そこで地元のミュージシャンを集めて録音を進め、Les Maledictus Sound名義の作品につなげていく。参加者にはドラマーのアンドレ・チェッカレリや、のちにPFMのメンバーとなるパトリック・ジヴァスの名前がある。
このプロジェクトの唯一のアルバムは1968年に発表された。内容は、50年代風のスペース・ポップ、サイケデリック・ロック、ラウンジ、ブラス・ロック、ジャズ、クラシック、ヴォードヴィルまでを一つの作品の中で混ぜ合わせたものとして知られている。演奏だけでなく、効果音や電子音響処理も使われていて、イージーリスニングの体裁を取りながら、かなり実験的な作りになっている。
収録曲「Jim Clark Was Driving Recklessly」は、1968年4月にレース中の事故で亡くなったF1ドライバー、ジム・クラークを題材にしている。こうした題材の取り方も含めて、当時のポップスやロックの枠に収まりきらない作りになっている。作品全体には、当時の音楽シーンの流れだけでなく、スタジオ技術や編集の発想も強く出ている。
このアルバムは、AZ、Canusa、Grand Prix、Révolution、SEMという5つの異なるレーベルから、複数のタイトルやジャケットで出回った。『Maledictus Sound』『Attention』『Jim-Clark』『L'Expérience』など、版によって表記が違うのも特徴だ。こうした流通の変則性もあって、後年はサイケデリックやイージーリスニングのコレクターのあいだで注目されるようになった。
Les Maledictus Soundは、マシエラの制作活動の一部として見ると分かりやすい。彼はSEMを拠点に、地元ミュージシャンを使いながら録音を進めていたので、このプロジェクトもその延長線上にある。名義としてはグループだが、実態としてはマシエラ主導のコンセプト作品に近い。
Les Maledictus Soundを聴くなら、ジャンルのつながりを追うより、曲ごとに何が起きるかを見るのが分かりやすい。ロックのバンド演奏が急にラウンジ風になったり、ジャズっぽい展開の中に電子音が入ったりするので、ひとつのスタイルに固定されない。1968年の作品としてはかなり変わった構成で、当時のフランスの実験音楽やサイケデリック作品を探るときの重要な名前として扱われている。