Vinyl Record Reviews
Liquid Liquidは、1980年代前半に活動したアメリカのバンドだ。所属レーベルは99 Recordsで、メンバーはDennis Young、Salvatore Principato、Scott Hartley、Richard McGuire。ジャンルはElectronic、Rock、Hip Hopにまたがり、Experimental、Indie Rock、Breaksの要素を持つグループとして知られている。
もともと彼らは、Liquid Liquidになる前の別名義で、より実験色の強いサウンドの7インチを1枚出している。その後にLiquid Liquidとして再編成し、打楽器を前面に出した演奏へ軸足を移した。
ライブでは観客に自分のパーカッションを持ってくるよう呼びかけていた時期があり、その場でDennis Youngがマリンバを持ち込んだことをきっかけに加入した、というエピソードが残っている。ここからも、バンドがリズムの組み立てをかなり重視していたことがわかる。
Liquid Liquidの音は、ベース、パーカッション、マリンバの反復を土台にした構成が目立つ。ギターや歌が前に出るというより、打楽器のパターンやリズムのずれで引っ張る作りだ。
彼らは自分たちのサウンドを「big beat」と呼んでいた。この言葉はのちに別の文脈で使われるが、Liquid Liquidの場合は、かなりパーカッシブな演奏を指していたものだ。
1983年のEP『Optimo』に収録された「Cavern」は、Liquid Liquidを語るうえで外せない曲だ。後にこの曲は、同年シュガー・ヒル・レコードから出たメリー・メル「White Lines (Don't Don't Do It)」に流用された。
厳密には「Cavern」の音源をそのまま使ったわけではなく、シュガー・ヒル側のハウスバンドが演奏をかなり忠実に再現し、その上にメリー・メルのラップや「Get higher, baby」のブリッジを加えた形だった。この件をきっかけに、ラジオでは「Cavern」が流れにくくなり、代わりに「White Lines」が流れるようになった。
これに対して、99 Recordsのオーナーであるエド・バールマンがシュガー・ヒル側へ抗議し、15か月に及ぶ裁判に発展した。結果として99 Records側が勝訴し、66万ドルの賠償が認められたが、シュガー・ヒル・レコードは支払い前の1985年11月22日に連邦破産法11章の適用を申請したため、賠償金は実際には支払われなかった。
Liquid Liquidは1984年にいったん解散している。さらに、この訴訟をめぐる金銭面と精神面の負担は99 Recordsにも影響し、レーベルは1985年に活動を終えた。
その後、Liquid Liquidは再結成し、DFAレコーズと組んで新しい音源制作にも取り組んでいる。初期の楽曲だけで終わらず、後年の活動につながっている点も、このバンドの記録として押さえておきたいところだ。
Liquid Liquidは、特に「Cavern」と「White Lines」をめぐる一件で名前が挙がることが多い。サンプリングや再演奏の境界をめぐる議論の中で、彼らの曲が参照されてきた。
加えて、ベースとパーカッションを軸にした構成や、観客を巻き込むライブのやり方は、当時のロックやダンス・ミュージックの区分に収まりきらない動きとして記録されている。