Vinyl Record Reviews
Lizzy Mercier Desclouxは、1956年12月16日にフランス・パリで生まれたシンガー、ミュージシャン、作家、画家だ。2004年4月20日にフランス・コルシカ島のサン=フロランで亡くなっている。音楽だけでなく、文章や絵の分野でも活動したマルチアーティストとして知られている。
リジー・メルシエ・デクルーはパリで生まれ、リヨンで育ったあと、10代で再びパリに戻り、美術学校に通った。若い時期にはパートナーのミシェル・エステバンとともに、ニューウェイヴ系のブティック「Harry Cover」を運営し、当時広がりつつあったパンク/ニューウェイヴの動きを扱う雑誌『Rock News』も立ち上げている。
1975年にはリチャード・ヘルやパティ・スミスと知り合い、ここで受けた影響がその後の音楽活動に結びついていく。1976年には新しい創作環境を求めてニューヨークへ移住し、パティ・スミスとは友人関係を築きながら、詩集『Desiderata』を共著した。
ニューヨークでは、ノー・ウェイヴ・シーンの先駆者の一人として活動した。1979年には、ミシェル・エステバンのプロデュースによるデビュー・アルバム『Press Color』をZEレコードから発表している。
この作品は、パンク色の強い作品というより、ディスコ、ファンク、映画音楽の要素が前面に出た内容として語られることが多い。全8曲をわずか2週間で録音したことも知られていて、短い制作期間のなかで、当時のニューヨークの空気をそのまま切り取ったような記録になっている。
Lizzy Mercier Desclouxの音楽は、RockやLatinを軸にしながら、Pop Rock、Afro-Cuban、Jazzdanceといった要素を取り込んでいった点が特徴だ。特にデビュー後は、アフリカのリズムをR&Bやポップスと組み合わせる方向へ進み、後のワールドビートの流れを先取りするような作風を展開した。
彼女は音楽家としてだけでなく、詩人、画家、作家、女優としても活動した。こうした複数の表現領域をまたぐ動きは、当時のアートや音楽の境界がゆるやかだった空気とも重なる。パリ、ニューヨーク、ノー・ウェイヴ、ニューウェイヴといった要素を行き来しながら、自分の作品を組み立てていった人物として見ておきたい。
現在は公式サイトのアーカイブ、ZE Recordsのアーティストページ、Bandcamp、Instagramなどで関連情報をたどることができる。作品や活動の背景を追うと、パンクやニューウェイヴの文脈だけでなく、アフロ・カリビアンやラテンの感覚を含んだ独自の音楽性が見えてくる。
Lizzy Mercier Desclouxは、パリで育ったアーティストがニューヨークの前衛的なシーンに入り込み、そこからさらにラテンやアフリカ由来のリズムへ向かっていった人物として整理すると、その動きが追いやすい。音楽史の中では、ノー・ウェイヴ周辺の人脈と、ワールドミュージック以前の越境的なポップ感覚の両方に触れる存在として見ておくとわかりやすい。