Vinyl Record Reviews
Lyn Christopherは、1970年代に活動したアメリカの女性シンガーだ。ジャンルはロック、ポップ、ファンク/ソウルにまたがり、ソフト・ロックやソウルの要素を持つ作品で知られている。1973年にパラマウント・レコードから唯一のアルバム『Lyn Christopher』を発表した。
彼女の代表作は、1973年にリリースされたセルフタイトル・アルバム『Lyn Christopher』だ。録音は1972年にニューヨークのエレクトリック・レディ・スタジオで行われ、プロデュースはロン・ジョンセンが担当した。
このアルバムは、70年代初頭のポップ/ソウルらしい楽観的なムードを持つヴォーカルが特徴とされる。ソフト・ロック寄りの曲調とソウルの感触が同居していて、当時のアメリカン・ポップスの流れをそのまま反映した内容になっている。
この作品で特に知られているのが、のちにKISSを結成するジーン・シモンズとポール・スタンレーが、数曲でバッキング・ヴォーカルとして参加している点だ。どちらもKISS結成前の録音で、初期のプロとしての仕事のひとつに数えられている。
ロック史の文脈では、この参加がよく話題になる。Lyn Christopherのアルバムを入口に、KISS以前の二人の活動をたどる人も少なくない。
アルバムはアメリカだけでなく、カナダや英国でも発売されたが、パラマウント・レコードが発売から数か月で消滅したこともあり、長いあいだ廃盤状態になっていた。流通の面では恵まれず、作品自体が広く知られる機会は限られていた。
収録曲の「Take Me With You」は、後年になってヒップホップ楽曲にサンプリングされたことで再び注目を集めた。こうした再利用をきっかけに、オリジナル盤の存在を知ったリスナーも多いはずだ。
さらに、2010年代にはユニバーサル・ミュージックを通じて再発され、デジタル配信でも入手できるようになった。長く埋もれていた作品が、ようやく聴きやすい形で戻ってきた流れになる。
Lyn Christopherの作品は、70年代のポップとソウルの接点をそのまま切り取ったようなアルバムとして聴ける。加えて、ジーン・シモンズとポール・スタンレーが参加している点や、後年のサンプリングによる再注目もあって、単なる埋もれた旧譜として片づけにくい内容だ。
活動の記録は多くないが、唯一のアルバムだけでも十分に話題がある。70年代アメリカの女性シンガーの作品を掘りたい人や、KISS以前の周辺史に興味がある人には、チェックしやすい一枚だ。
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