Vinyl Record Reviews
Makoto Matsushita(松下誠)は、1955年11月16日生まれの日本のマルチインストゥルメンタリスト、作曲家、プロデューサー、作詞家、ヴォーカリストだ。ギタリスト、編曲家としても知られていて、静岡県掛川市の出身とされている。
松下誠はヤマハ・ネム音楽院(現・ヤマハ音楽院)でギターを専攻し、19歳でステージ・ミュージシャンとしてプロ活動を始めた。デビュー初期には、ヤマハ出身の女性シンガー・山根麻衣のギターとアレンジを担当している。その後はスタジオ・ミュージシャンとして活動の幅を広げ、AB'SやParadigm Shiftのメンバーとしても参加した。
編曲や演奏の仕事では、松田聖子や近藤真彦をはじめ、歌謡曲からポップスまで幅広い作品に関わってきた。演奏者としてだけでなく、アレンジ面でも存在感を見せてきた経歴がある。
1981年に発表されたソロ・デビュー作『First Light』は、松下誠を語るうえで外せない作品だ。収録曲「Lazy Night」は、スティーリー・ダンの『Gaucho』を意識して書かれたとされている。このアルバムでは、当時のアメリカ東海岸AORの影響がはっきり見える。
音楽的には、Electronic、Rock、Pop、Jazz、Funk / Soulの要素をまたぎながら、Pop Rock、Funk、Prog Rock、Jazz-Rock、Kayōkyoku、City Pop、AORといったスタイルに接点がある。ギターを軸にしつつ、演奏、作曲、編曲、歌唱まで自分で担える点が特徴として挙げられる。
『First Light』は、2010年代以降のシティ・ポップ再評価の流れの中で改めて注目された。国内外で「シティ・ポップ・アルバム」として取り上げられる機会が増え、Light In The Attic Recordsをはじめ複数レーベルからアナログ再発やリマスター配信も行われている。
この動きによって、松下誠の名前は日本のポップスやAORの文脈だけでなく、海外のリスナーにも届くようになった。もともとスタジオ・ミュージシャン、編曲家、バンド・メンバー、ソロ・アーティストという複数の立場で活動してきたことも、作品の幅につながっている。
松下誠は、バンド活動、スタジオ仕事、ソロ作品のどれを見ても、70年代末から80年代初頭の日本のポップスとAORの接点に深く関わってきた人物だ。『First Light』から入って、参加作品や編曲仕事をたどっていくと、当時の日本の音楽制作の現場が見えてくる。