Vinyl Record Reviews
MFSBは、フィラデルフィアを拠点に活動したR&B/ファンク/ディスコ系のバンドだ。名前は「Mother, Father, Sister, Brother」の略で、出自の異なるミュージシャンたちが音楽的にひとつの家族のように結びついていることを表すためにつけられたとされる。
1970年代のフィラデルフィア・インターナショナル・レコード周辺で生まれたグループで、シグマ・サウンド・スタジオのハウス・バンドとして多くのヒット作に参加した。The O'Jays、Harold Melvin & the Blue Notes、The Stylisticsといったアーティストの録音を支えたことでも知られている。
MFSBの背景には、ケニー・ギャンブル、レオン・ハフ、トム・ベルらが築いたフィラデルフィア・サウンドがある。1971年に設立されたPhiladelphia International Recordsの制作現場で、ソウル、ゴスペル、ドゥーワップを土台にしたサウンドが整えられていった。
MFSBはその制作体制の中で、演奏面を担う重要な存在だった。メンバーは固定ではなく入れ替わりがあり、セッションごとに多くのミュージシャンが参加している。そうした形で、レーベルの多くの作品に共通する音のまとまりを作っていた。
MFSBの演奏は、タイトなグルーヴと細かく組まれたアレンジが特徴だ。ファンク、ソウル、ジャズ、ディスコの要素が混ざっていて、ホーン・セクションの厚み、ベースラインの動き、リズムの刻み方がはっきりしている。
中心になっていたのは、ロニー・ベイカー、ノーマン・ハリス、アール・ヤングのトリオだ。ベース、ギター、ドラムの組み合わせで数多くのセッションに参加し、後にはSalsoul Orchestraの土台にもなった。
MFSBの最初の大きなヒットとして挙げられるのが、1973年のインストゥルメンタル曲「TSOP (The Sound of Philadelphia)」だ。これはテレビ番組「Soul Train」のテーマ曲として使われ、Billboard Hot 100で1位を記録した。グラミー賞のBest R&B Instrumental Performanceも受賞している。
その後も「Love Is the Message」「Sexy」「K-Jee」などが知られている。「Love Is the Message」は、ニューヨークのクラブParadise GarageでDJラリー・レヴァンが頻繁にかけたことで、そのクラブを象徴する曲のひとつになった。ディスコからハウスへとつながる時期に、ダンスフロアで広く親しまれた楽曲でもある。
MFSBには、Dexter Wansel、Reggie Lucas、Leon Huff、Keith Benson、Ron Kersey、Norman Harris、Anthony Jackson、Earl Young、Ron Baker、Thom Bell、Vincent Montana, Jr. など、多くのミュージシャンが関わっている。ホーン、リズム隊、ストリングスまで含めた大きな編成で、スタジオ作品を支える役割が大きかった。
こうした顔ぶれを見ると、MFSBは単独のバンドというより、フィラデルフィアの制作現場を支えた演奏集団として機能していたことがわかる。セッションごとにメンバーが入れ替わる形でも、サウンドの方向性はしっかり保たれていた。
MFSBの音は、のちのダンスミュージックにかなり近いところで受け継がれている。特に、Baker-Harris-Youngの3人が作ったリズムの感覚は、その後のディスコやハウスの土台に触れている。
アール・ヤングは、ディスコの基本型として語られる「four-on-the-floor」ビートの形成に関わった人物としても知られている。The Trammpsの「Disco Inferno」など、多くの制作で重要な役割を果たした。
MFSBの仕事は、フィラデルフィア・ソウルが単なる地域色の強いスタイルではなく、その後のクラブ文化やダンスミュージックの流れに接続していく音作りだったことを示している。
MFSBは、1970年代のフィラデルフィア・サウンドを語るうえで外せない存在だ。自分たちの名義での楽曲だけでなく、数多くのセッションを通して、当時のソウルやディスコの輪郭を形にしていた。