Vinyl Record Reviews
Mouseは、1970年代前半のイギリスで活動した短命のプログレッシブ・ロック・バンドだ。中心人物はジャズ/フュージョン系ギタリストのRay Russellで、1973年にSovereignから唯一のアルバム『Lady Killer』を発表している。
Ray Russellは、この時期にロック寄りの単発プロジェクトをいくつか動かしていた。Mouseはその流れの中で、1972年のRunning Manと1975年のChopynの間に位置するプロジェクトになる。4年間で3つのバンドを渡り歩いた中の2番目の企画として整理できる。
メンバーは、ヴォーカルとキーボードのAlan “Al” Clare、ギターとヴォーカルのRay Russell、ベースのJeff Watts、ドラムのAl Rushtonという編成だった。
唯一のアルバム『Lady Killer』は、キーボード主体のポップ・ロック、プログレッシブ・ロック、Black Sabbathを思わせるハードロックなど、複数の要素を並べた作品として知られている。中でも、Medicine Headのカヴァー「All the Fallen Teenangels」が話題になった。
このアルバムは、スタイルの切り替えが多い一方で、全体のまとまりも意識された作りとして紹介されることが多い。Mouseの音楽を知るうえでは、この1枚が中心になる。
Mouseを語るときは、Ray Russellの経歴も外せない。彼はジャズ/フュージョン畑で長く活動したギタリストで、Dionne WarwickやHeaven 17など幅広いアーティストのセッションに参加している。
また、John Barry SevenではギタリストのVic Flickの後任を務め、『007』シリーズの映画音楽の演奏にも関わっている。1980年代にはGil Evansのヨーロッパ・ツアー・バンドにも参加していて、ロックだけでなくジャズ寄りの現場でも実績を重ねていた。
『Lady Killer』は1973年のオリジナル盤のあと、2013年にGuerssen Records傘下のSommorから初めてヴァイナル再発された。その後も再発が続いていて、現在は70年代英国プログレの周辺作として参照される機会がある。
短命のバンドではあるが、Ray Russellの経歴、キーボードを軸にした構成、プログレとハードロックの混在といった要素が重なって、当時の英国ロックの一断面を残したグループとして見ておきたい存在だ。