Vinyl Record Reviews
Museは、イングランド・デヴォン州ティーンマス出身のロックバンドだ。1994年に結成され、メンバーはマシュー・ベラミー、クリス・ウォルステンホルム、ドミニク・ハワードの3人で構成されている。ライブでは2022年以降、Dan Lancasterが追加の楽器やボーカルで参加している。
3人はティーンマスのTeignmouth Community Collegeで、それぞれ別のバンドに所属していた。マシュー・ベラミーがドミニク・ハワードのバンドCarnage Mayhemのオーディションを受けて歌とソングライティングを担うようになり、バンド名はGothic Plagueに変わった。続いて、Fixed Penaltyでドラムを叩いていたクリス・ウォルステンホルムを誘い、彼はベースに転向してレッスンを受け始めている。その後、ゴス/グラム風のイメージのRocket Baby Dollsと名を変え、プリンス・トラストから機材購入のために150ポンドの助成も受けた。
1994年には地元のバトル・オブ・ザ・バンズで、抗議の意味を込めて機材を壊すパフォーマンスをして優勝した。ベラミーは「本当に衝撃だった、とんでもない衝撃」と振り返り、ここからバンドは本気になる。3人は仕事を辞め、短くて「ポスターで見栄えがいい」Museという名前を選んでティーンマスを離れた。
Skunk Anansieの前座でロンドンやマンチェスターを回ったあと、コーンウォールのSawmills StudioのオーナーDennis Smithと出会い、1998年5月にEP『Muse』を発表した。1999年の『Muscle Museum』EPで注目を集めた。インディ・シングル・チャートで上位に入り、ラジオDJのSteve LamacqやNMEの関心を集める。ColumbiaやRick RubinのAmerican Recordingsでのショーケースを経てアメリカのMaverick Recordsと契約し、1999年にはウッドストック'99に出演、デビュー・アルバム『Showbiz』をリリースした。
『Showbiz』では、マシュー・ベラミーのファルセットと、メランコリックなオルタナティブ・ロックの色が前面に出ている。プロデュースはJohn Leckieで、ティーンマスで自分たちの居場所を作ろうともがいた日々を映した作品でもある。
2作目の『Origin of Symmetry』(2001年)では、教会のオルガン、メロトロン、動物の骨、拡張したドラム・キットなど、かなり幅広い楽器を取り入れている。「Feeling Good」のカバーも収録され、ライブでの勢いのある演奏でも評価を高めた。バンドはこの時期、ヘンドリックスやトム・モレロの影響を挙げている。ところがMaverickは、ベラミーの歌がラジオ向きではないとして「Plug In Baby」の録り直しを求めた。バンドはこれを拒んでレーベルを離れ、このアルバムがアメリカで出たのはWarner Bros.と契約した後の2005年9月になってからだった。2002年には、セリーヌ・ディオンがラスベガスのショーに「Muse」と名付けようとした際に法的措置をちらつかせ、名前の使用料として提示された5万ドルを断っている。
続く『Absolution』(2003年)は、クラシック音楽の要素がさらに強まり、「Butterflies & Hurricanes」ではオーケストラも入っている。Rich Costeyらのプロデュースで、全英初登場1位を獲得し、7作連続の全英1位アルバムの最初の1枚となった。「Time Is Running Out」は初の全英トップ10シングルである。同じ年には、「Feeling Good」を無断で使ったネスカフェのCMをめぐってネスレを訴え、得たお金をオックスファムに寄付している。
2004年6月にはグラストンベリー・フェスティバルでヘッドライナーを務め、ベラミーはのちに「人生最高のライヴ」と呼んだ。だがこのライヴを観に来ていたドミニク・ハワードの父親が、終演後まもなく心臓発作で亡くなっている。2005年にはブリット・アワードの最優秀ブリティッシュ・ライヴ・アクトを受賞し、7月2日にはパリのLive 8にも出演した。
『Black Holes & Revelations』(2006年)では、電子音やポップの要素も見えてくる。「Supermassive Black Hole」「Starlight」「Knights of Cydonia」などが収録され、全英ほか多くの国で1位、全米でも9位まで上がった。マーキュリー・プライズにもノミネートされたが、受賞はArctic Monkeysに渡っている。
2007年には、建て替え後のウェンブリー・スタジアムを最初にソールドアウトさせたアーティストになっている。その2公演はライブ盤『HAARP』(2008年)に収められている。
『The Resistance』(2009年)は、ジョージ・オーウェルの『1984年』を下敷きにしたような政治的テーマを含む作品だ。バンド自身が初めてプロデュースを手がけ、19か国で1位、全英初週約14万8,000枚、全米3位を記録し、第53回グラミー賞の最優秀ロック・アルバムを受賞した。録音中にはクリス・ウォルステンホルムがアルコール依存症の治療施設に入り、バンドの存続が危ぶまれた。2010年のグラストンベリーでは、U2がヘッドライナーの出演をキャンセルしたあと、そのU2のジ・エッジがMuseのステージに飛び入りし、「Where the Streets Have No Name」を共演している。
『The 2nd Law』(2012年)では、ダブステップ、ファンク、映画音楽の要素まで取り込み、全英1位、全米2位となった。収録曲「Survival」はロンドン・オリンピックの公式ソングとして使われ、閉会式でも演奏されている。2013年7月6日のローマ・オリンピック・スタジアム公演には6万人以上が集まり、4Kで撮影された初めてのコンサートとなった。
『Drones』(2015年)は、現代戦争の非人間化を扱ったコンセプト・アルバムで、『The 2nd Law』の電子音路線のあと、よりシンプルなロックを目指してRobert John "Mutt" Langeをプロデューサーに迎え、バンクーバーで録音した。英米を含む主要国で1位となり、2度目のグラミー賞最優秀ロック・アルバムを受賞している。2016年のグラストンベリーでは、3日間すべてでヘッドライナーを務めた最初のアーティストになった。
2018年の『Simulation Theory』は80年代風のシンセとSF的なイメージが目立つ作品で、2022年の『Will of the People』では、当時の社会情勢やパンデミック、抗議運動などの影響が反映され、初期の重いサウンドに立ち返った。2022年からは、2006年からライブを支えたMorgan Nichollsに代わってDan Lancasterがツアーに加わっている。Guardianは2023年頃にはバンドへの批評的な評価が下がっていたと書き、ベラミー自身も直近の2作が不評だったことを認めている。2026年6月26日には10作目『The Wow! Signal』を発表した。宇宙や地球外生命、ベラミーの破局から影響を受けた作品で、大半の曲をDan Lancasterがプロデュースしている。
Museの音楽は、インディ・ロックやオルタナティブ・ロックを軸にしながら、クラシック、電子音、ポップ、SF的な要素まで広がっている。マシュー・ベラミーの歌い方はジェフ・バックリィの影響を受けているとされ、ギター面ではジミ・ヘンドリックスやトム・モレロの名前が挙がる。Queen、Led Zeppelin、Radioheadと比較されることもある。Red Hot Chili Peppersの前座を務めたことでパフォーマンスの水準を上げざるを得なかったとベラミーは語り、ボウイ、ロキシー・ミュージック、ジェネシスに連なる「ちょっと狂った、エキセントリックな英国」の伝統に自分たちを位置づけている。Guardianは彼らを「恐れ知らずに派手」と評した。
歌詞では、ジョージ・オーウェルの『1984年』やミチオ・カクの『超空間』など、書籍の影響が見える。
Museはこれまでに2回のグラミー賞、2回のブリット・アワード、5回のMTV Europe Music Awards、8回のNME Awardsを受賞している。2012年にはIvor Novello AwardのInternational Achievementも受けている。アルバムの総売上は世界で2000万枚を超えている。