Vinyl Record Reviews
Neutral Milk Hotelは、1989年にルイジアナ州ラストンで結成されたアメリカのインディー・ロック・バンドだ。メンバーにはJeff Mangum、Laura Carter、Scott Spillane、Julian Koster、Jeremy Barnesがいる。ロックを軸にしながら、インディー・ロックとローファイの要素を強く持つグループとして知られている。
バンドの中心人物はJeff Mangumだ。Neutral Milk Hotelは1989年に始まり、1990年代に活動を進めていく。特に1998年に発表された『In the Aeroplane Over the Sea』で広く名前が知られるようになった。
このアルバム制作の背景には、Mangumが1995年初めにルイジアナ州ラストンの書店で『アンネの日記』を手に取り、その内容に強く反応したというエピソードがある。彼はその出来事のあと、3日間泣き続けたと語っている。また当時は、タイムマシンでアンネ・フランクを救いに行く夢を毎晩のように見ていたとも話している。この体験が『In the Aeroplane Over the Sea』の制作につながったとされている。
アルバム発表後のツアーを終えると、Mangumは表舞台から徐々に距離を置くようになる。2001年2月4日、ニュージーランド・オークランドのKing's Armsでのライブを最後に、バンドは無期限の活動休止に入った。正式な解散発表はなく、理由の説明もなかった。後年の2002年インタビューでは、Mangumが「音楽では自分自身や世界に見える苦しみを解決できなかった」と振り返っている。
Neutral Milk Hotelの音楽は、インディー・ロックとローファイを基調にしている。演奏や録音には、きれいに整えすぎない質感が残っている。そこに、歌と演奏の勢い、音数の多さ、音像の密度が重なる形で楽曲が組み立てられている。
とくに『In the Aeroplane Over the Sea』では、表題曲をはじめ、「Holland, 1945」「Oh, Comely」「Ghost」などにアンネ・フランクへの言及が見られる。「Two-Headed Boy」や「Communist Daughter」にも、その影が反映されている。歌詞は特定の人物や出来事に触れつつ、個人の記憶や喪失感にも広がっている。
このアルバムは、アンネ・フランクの物語を直接扱うだけではなく、失われた無垢さや、年齢や経験によって鈍くなった内面を取り戻したいという感覚も含んでいる。個別の歴史的モチーフと、より広い感情のテーマが同居している点が、この作品の特徴として語られている。
また、活動休止の経緯も含めて、Neutral Milk Hotelは『In the Aeroplane Over the Sea』と結びつけて語られることが多い。キャリアの絶頂期に姿を消したことも、このアルバムが伝説的な名盤として扱われる理由のひとつになっている。