Neutral Milk Hotel - In The Aeroplane Over The Sea (1998)
Neutral Milk Hotel『In The Aeroplane Over The Sea』レビュー
Neutral Milk Hotelの『In The Aeroplane Over The Sea』は、1998年にMerge Recordsから出た2作目のアルバムで、同バンドの名前を広く知らしめた作品だ。アーティストはルイジアナ州ルストンで1989年に結成されたアメリカのインディー・ロック・バンド。Jeff Mangumを中心に、Laura Carter、Scott Spillane、Julian Koster、Jeremy Barnesらが参加し、Elephant 6周辺の流れを強く感じさせる録音と演奏でまとまっている。
作品の輪郭
このアルバムは、ローファイな質感と、管楽器やアコースティック楽器を交えた編成がはっきりと印象に残る。録音は1997年7月から9月にかけて、Elephant 6 Recording Companyで行われた。Mergeの初回プレスは1600枚とされ、現在はコレクターズアイテムとしても扱われる盤だ。今回のUS盤1st pressingは、標準的な重量のヴィニール、オフホワイトのレーベル、緑がかったカバーアート、9.5インチ角の歌詞・クレジット入りインサートなど、当時の初回盤らしい仕様になっている。スリーブのステッカー表記とスパイン表記でカタログ番号が異なる点も、この盤の特徴。
歌詞世界と背景
制作前にJeff Mangumがアンネ・フランクの『アンネの日記』を読み、その体験が歌詞世界に強く反映されたことはよく知られている。彼自身が「2日間読み続けて打ちのめされた」と語ったエピソードも残っている。アルバム全体に、個人の記憶や歴史の断片、死や喪失の感覚が入り込み、曲ごとに情景が細かく切り替わる構成になっている。タイトル曲の“Over the Sea”や「Holland, 1945」など、固有名詞がそのまま曲名やモチーフとして機能しているのもこの作品らしいところだ。
「Holland, 1945」は代表曲のひとつとして知られ、勢いのある演奏と、歌詞の断片的なイメージが強く残る。曲名の由来についても、Mangumがアートディレクターに曲名を求められた際に「Holland」と「1945」という語を挙げ、それが組み合わさって定着したという話がある。
音像の作り方
録音面では、Robert Schneiderがデンバーの民家に構えた簡易スタジオで作業が進められた。真空管プリアンプやマイクをあえて歪ませる手法で、Mangumのアコースティックギターに独特のざらつきが与えられている。ローファイといっても単純に荒いだけではなく、音の輪郭が近く、各パートの配置が分かる作りだ。Scott Spillaneが担当したホーン・アレンジも重要で、最後にセッションへ合流した彼が、譜面を自分の楽器に合わせて書き直したという話も残っている。
実際に聴くと、音数の多い曲でも混線せず、逆に少ない編成の曲では声とギターの距離がかなり近い。ドラムの鳴りやブラスの入り方も、整いすぎないまま曲の推進力を作っていて、インディー・ロックの中でもかなり個性の強い部類に入る。耳に残るメロディと、簡素な録音の組み合わせが、この作品の中心にある。
同時代とのつながり
1990年代後半のインディー・ロックは、ローファイやホームレコーディングの感覚を共有する作品が多かったが、このアルバムはその中でも歌詞の密度と構成の強さで際立っている。Elephant 6周辺のアーティスト群、たとえばThe Apples in StereoやOlivia Tremor Control、Beulahなどと並べて語られることが多い一方で、Neutral Milk Hotelはより切迫した歌唱と、歴史や記憶を直線的でない形で差し出す点で独特だ。
後年、この作品は口コミで評価が広がり、名盤リストで繰り返し取り上げられる存在になった。バンド自体は1998年末のロンドン公演を最後に事実上活動を止め、長く表舞台から離れることになるが、その後もアルバム単体の評価は上がり続けた。初回盤の希少性と、作品そのものの存在感が重なって、今ではバンドの代表作という枠を超えて語られることが多い。
まとめ
『In The Aeroplane Over The Sea』は、1998年時点のインディー・ロックの空気をそのまま閉じ込めた作品ではなく、個人的な読書体験、歴史のイメージ、簡易な録音環境、ブラスを含む編成がひとつにまとまったアルバムだ。Merge Recordsの初回プレスは少数で、盤としても資料性が高い。音楽としては、荒い質感の中に曲の輪郭がはっきり残るタイプで、代表曲「Holland, 1945」を中心に、全編を通してJeff Mangumの書くイメージの連なりが前面に出ている。
トラックリスト
- A1 The King Of Carrot Flowers Pt. One 2:06
- A2 The King Of Carrot Flowers Pts. Two & Three 3:05
- A3 In The Aeroplane Over The Sea 3:21
- A4 Two-Headed Boy 4:26
- A5 The Fool 1:49
- A6 Holland, 1945 3:15
- A7 Communist Daughter 1:54
- B8 Oh Comely 8:18
- B9 Ghost 4:09
- B10 Untitled 2:15
- B11 Two-Headed Boy Pt. Two 5:15
動画プレイリスト
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Neutral Milk Hotel - The King Of Carrot Flowers, Pt. 1
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Neutral Milk Hotel - The King Of Carrot Flowers, Pts. 2-3
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Neutral Milk Hotel - In The Aeroplane Over The Sea
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Neutral Milk Hotel - Two-Headed Boy
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Neutral Milk Hotel - The Fool
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Neutral Milk Hotel - Holland, 1945
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Neutral Milk Hotel - Communist Daughter
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Neutral Milk Hotel - Oh Comely
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Neutral Milk Hotel - Ghost
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Neutral Milk Hotel - [Untitled]
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Neutral Milk Hotel - Two-Headed Boy, Pt. 2