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Orange Juice(オレンジ・ジュース)は、1979年にスコットランド・グラスゴー郊外のベアーズデンで結成されたポストパンク/インディ・ポップバンドである。シンガーソングライターのエドウィン・コリンズ(Edwyn Collins)を中心に、名門インディペンデント・レーベル「ポストカード・レコーズ(Postcard Records)」の看板アクトとして頭角を現した。
パンク直後のアグレッシブでマッチョなロック観に背を向け、ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドやザ・バーズ直系のジャングリーなギターサウンド、シックやノーザン・ソウルを思わせる軽快なダンスビート、そして文学的で自虐的なユーモアを湛えたボーカルを融合させた。その音楽性は「ネオ・アコースティック(ネコアコ)」や「ギターポップ」の原点となり、1983年にはRoland TB-303をポップソングとして世界で初めて効果的に導入した全英8位のヒット曲「Rip It Up」を生み出した。後世の英米インディ・ロックや日本の渋谷系に決定的な影響を与えた伝説的グループである。
バンドの前身は、エドウィン・コリンズらが1976年に結成したパンクバンド「ニュー・ソニックス(Nu-Sonics)」に遡る。1979年、よりロマンティックで純粋なポップの響きを求めてバンド名を「オレンジ・ジュース」へと改名。初期メンバーはエドウィン・コリンズ(ボーカル、ギター)、ジェームズ・カーク(ギター、ボーカル)、デヴィッド・マクライモント(ベース)、スティーヴン・デイリー(ドラムス)の4人編成であった。
彼らは盟友のアラン・ホーンとともに、グラスゴーのアパートの一室を拠点にインディペンデント・レーベル「ポストカード・レコーズ」を設立。「The Sound of Young Scotland(若きスコットランドの響き)」という高らかなスローガンと猫のトレードマークを掲げ、1980年に記念すべき第1弾シングル「Falling and Laughing」を自主制作のソノシート付きで発表した。粗削りながらも瑞々しいメロディと疾走感あふれるサウンドは、ジョセフKやアズテック・カメラらとともに「ポストカード・シーン」を形成し、イギリス全土の音楽ファンの注目をスコットランドへと引きつけた。
ポストカードから「Blue Boy」「Simply Thrilled Honey」「Poor Old Soul」といった傑作シングルを連発した後、バンドは1981年に大手ポリドール・レコードと契約を交わす。1982年3月にリリースされたファースト・フルアルバム『You Can't Hide Your Love Forever(愛の秘密)』は、全英チャートでトップ40入りを果たした。
カークが作曲した名曲「Felicity」や再録音された「Falling and Laughing」、ほろ苦い青春の叙情が漂う「Consolation Prize」などを収録した本作は、アコースティック・ギターとクリーンなエレキギターが織りなす清涼なアンサンブル、ファンキーなベースライン、そしてコリンズのクルーナー的な歌唱が完璧な調和を見せており、80年代英国インディ・ポップの金字塔として今なお絶賛されている。
ファーストアルバム発表後、コリンズとカークの音楽的・個人的対立からカークとデイリーがバンドを脱退。コリンズはジンバブエ出身のドラマー/パーカッショニストであるジーク・マニカと、元ジョセフKのギタリストであるマルコム・ロスを迎え入れ、リズムとアレンジの強化を図った。
こうして1982年後半に発表されたセカンドアルバム『Rip It Up』では、アフロ・ビートやディスコ、ファンクの要素が大幅に導入された。1983年初頭にシングルカットされたタイトル曲「Rip It Up」は全英シングルチャート8位に達し、バンドにとって最大の商業的成功を記録する。特筆すべきは、同曲で特徴的なフレーズを奏でるシンセベースが「Roland TB-303」による演奏だった点である。これは後にシカゴ・ハウスやアシッド・ハウスの代名詞となるTB-303が、世界で初めてポピュラー音楽のヒットチャート上位に登場した歴史的瞬間であった。
その後、ミニアルバム『Texas Fever』(1984年)の制作を経てロスとマクライモントが相次いで離脱。コリンズとマニカの2人組となったバンドは、デニス・ボーヴェルをプロデューサーに迎えたラストアルバム『The Orange Juice』(1984年、名曲「What Presence?!」収録)をリリースした後、1985年初頭に解散した。
解散後、エドウィン・コリンズはソロアーティストへと転身。1994年のアルバム『Gorgeous George』からシングルカットされたノーザン・ソウル調のガレージロック「A Girl Like You」が世界中でミリオンセラーを記録し、再び世界的な脚光を浴びた。2005年には脳出血により一時は言語と運動機能を失う重篤な危機に見舞われたが、不屈の闘病生活を経て奇跡的な回復を遂げ、音楽活動への復帰を果たした。
オレンジ・ジュースが切り拓いた地平は、世界のインディ・ミュージックの生態系そのものを決定づけた。革ジャンとパンクの定型を脱ぎ捨て、古着のカーディガンやタータンチェックを身にまとい、繊細さと知性、そして踊れるグルーヴを同居させたその姿勢は、NMEが企画した歴史的コンピレーション『C86』や名門サラ・レコーズの潮流へと直結した。
ザ・スミス(ジョニー・マーはコリンズのプレイスタイルを絶賛している)をはじめ、ティーンエイジ・ファンクラブ、ベル・アンド・セバスチャン、フランツ・フェルディナンド、ザ・パステルズ、カメラ・オブスキュラなど、スコットランドおよび英国を代表するバンドの多くが彼らからの絶大な影響を公言している。さらに日本においては、1990年代初頭の「渋谷系」ムーブメントの精神的支柱となり、フリッパーズ・ギター(小山田圭吾・小沢健二)をはじめとする多くのミュージシャンに決定的なインスピレーションを与え続けている。