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Pharoah Sandersは、1940年10月13日にアメリカ・アーカンソー州リトルロックで生まれたジャズ・テナーサックス奏者だ。2022年9月24日にロサンゼルスで亡くなっている。ジャンルとしてはジャズに分類され、スタイルはモーダル・ジャズ、スピリチュアル・ジャズに結びつけられることが多い。
1962年にニューヨークへ移った直後のPharoah Sandersは、かなり厳しい生活を送っていた。住む場所を失い、生活費を稼ぐために献血を繰り返したり、俳優Melvin Van Peeblesと教会の弔問客用ベンチで夜を明かしたり、グリニッジ・ヴィレッジの地下にあるレストランでコックとして働いたりしていたという。
その後、ニューヨークに拠点を置いていたSun Raとそのアーケストラが彼を支えた。約1年間の在籍を経て、John Coltraneから新しいバンドへの参加を誘われる。ここからSandersの名前は、前衛ジャズやスピリチュアル・ジャズの流れの中で広く知られるようになっていく。
ファーストネームの「Pharoah」については、Sun Raが名付けたと語られることがあるが、Sanders本人の説明では少し事情が違う。祖母が聖書にちなんで「Pharoah」と名付けようとしたものの、発音のしやすさを考えて「Ferrell」に落ち着き、ニューヨークで音楽家組合に加入する際に芸名としてあらためて「Pharoah」を選んだという。
Pharoah Sandersの演奏は、モーダルな展開を土台にしながら、長尺の即興や反復、音量の変化を使って進んでいくことが多い。テナーサックスの音色やフレーズの運びは、John Coltraneの系譜と並べて語られることが多く、特に1960年代後半以降の作品では、演奏の構成そのものが重要な要素になっている。
スピリチュアル・ジャズとの結びつきも強い。宗教的なメッセージや祈りの要素を直接的に使う場面があり、楽曲の長さや展開もその方向性とつながっている。ジャズの中でも、ソロの技巧だけでなく、曲全体の流れや集団演奏の密度が前に出るタイプの音楽を続けてきた。
1969年に自身名義で発表したアルバム『Karma』は、Pharoah Sandersを語るうえで外せない作品だ。スピリチュアル・ジャズの金字塔として扱われることが多く、収録曲「The Creator Has A Master Plan」は、ヴォーカリストLeon Thomasとの共作による約32分の組曲になっている。
この曲では、サックスの演奏だけでなく、歌、リズム、繰り返しのフレーズが長い時間をかけて組み上がっていく。Sandersの音楽性を端的に示す曲として、現在でもよく参照されている。
Pharoah Sandersは、John Coltraneの周辺から出発しつつ、スピリチュアル・ジャズの重要な担い手として位置づけられている。特に『Karma』以降の仕事は、ジャズの枠を広げる試みとして受け止められてきた。
彼の活動は、サックスの表現を前に押し出すだけでなく、ジャズを通して宗教性や共同体的な感覚を扱う流れにもつながっている。現代のジャズや実験音楽の文脈でも、Pharoah Sandersの名前はたびたび挙がる。