Vinyl Record Reviews
Phew(本名:森谷弘美)は、大阪出身の日本のアヴァンギャルド・ヴォーカリスト。1959年9月12日生まれで、1970年代末にポストパンク・バンドAunt Sallyのヴォーカルとして活動を始めた。
Aunt Sallyは1979年にVanity Recordsから自主制作盤を発表している。バンド解散後、Phewは坂本龍一プロデュースのシングル「終曲/うらはら」をリリースし、ソロ活動へ進んだ。
その後、1981年にセルフタイトルのソロ・デビュー作を発表した。この作品はドイツ・ケルンのConny Plankのスタジオで録音され、Canのホルガー・シューカイとヤキ・リーベツァイトが参加している。Conny Plankがプロデュースを担当しており、日本の当時のシーンではかなり国際色の強い制作体制だった。
Phewの音楽は、Electronic、Rockを軸に、Art Rock、Industrial、Post-Punk、Avantgardeといった要素で語られることが多い。初期作では、ポストパンクの緊張感と電子音の使い方がはっきりしていて、後年はシンセサイザーやリズムボックスを中心にした制作も続けている。
2017年の『Light Sleep』では、アナログ・シンセサイザーとヴィンテージのリズムボックスのみで楽曲を組み立てている。音色の選び方や音の配置に、電子楽器への継続的な関心が見える。
長いあいだ作品数は多くなかったが、2015年の『A New World』、2017年の『Light Sleep』でソロ活動を本格的に再開した。その後も活動は続き、現在はNovo Tono、Phew Unit、山本精一とのデュオ、Big Pictureなど、さまざまなプロジェクトに関わっている。
また、過去の作品の再評価も進んでいる。2022年にはAunt Sallyの1979年作、1993年作『Our Likeness』、そしてPhew自身のデビュー作がそれぞれ再発され、ディスコグラフィーを改めてたどりやすくなっている。
Phewの1981年のソロ・デビュー作は、後年になってポストパンクとシンセサイザー音楽が交差する作品として注目されるようになった。中古盤市場でしか見つけにくかった時期を経て、近年は海外も含めて音楽メディアで取り上げられる機会が増えている。
初期のポストパンク、坂本龍一との共演、Canのメンバーを迎えた制作、そして近年の電子音楽寄りの作品まで、Phewの活動は一貫して実験性のある方向に続いている。日本のオルタナティブ/アヴァンギャルドの文脈をたどるうえで、外せない存在のひとりだ。