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Pierre Moerlen's Gongは、Gongの中心人物がドラマー/パーカッショニストのPierre Moerlenに移っていく中で生まれたバンド名だ。元々のGongはDaevid Allenを中心にしたサイケデリック・ロック・バンドだったが、メンバーの入れ替わりを経て、Moerlenが事実上のリーダーになると音楽性がジャズ/ロック・フュージョン寄りに変化していく。Virgin Recordsとの契約終了後、他のGong系プロジェクトと区別するために「Pierre Moerlen's Gong」を名乗るようになった。
Pierre Moerlenは1952年10月23日にフランス・コルマールで生まれ、1973年1月にDaevid Allen率いるGongへ加入した。『Angel's Egg』(1973年)でデビューし、その後はバンドの変化の中心に立つ。1973年6月には、体調を崩したRobert Wyattの代役として、Mike Oldfield『Tubular Bells』初演のパーカッションを担当したという記録も残っている。
Allen脱退後のGongは人員の入れ替わりが続き、Moerlenが音楽面を引っ張る形になった。『Expresso II』(1978年)では、Allan Holdsworthを迎え、サイケデリック色よりもジャズ/ロック・フュージョンの要素が前に出た。その後、VirginからAristaへ移るタイミングでバンド名をPierre Moerlen's Gongに変更し、1979年から1981年にかけて『Downwind』『Time Is The Key』『Live』『Leave It Open』の4作を発表している。これらはこの時期の代表作として扱われることが多い。
このバンドの特徴は、マリンバ、ヴィブラフォン、シロフォン、グロッケンシュピールといった鍵盤打楽器の使い方にある。Pierre Moerlen本人に加えて、弟のBenoit MoerlenやFrançois Causseがこれらを担い、ギターやベースと組み合わせながら独特の編成を作っていた。
サウンド面では、初期Gongのサイケデリックな流れから離れ、ジャズ・ロック、フュージョン、プログレッシブ・ロックの要素を組み合わせた演奏が中心になる。Allan Holdsworthのようなプレイヤーが参加した時期には、ギターのフレーズと鍵盤打楽器のリズムがぶつかり合う構成が目立つ。派手な歌ものよりも、演奏の組み立てや音色の配置に重きを置いた作りが多い。
1980年代半ばには、Pierre MoerlenとHansford Roweが新しい編成を組み、スウェーデンのTributeのメンバーを含む体制で再始動した。1986年の『Breakthrough』では、ポップ寄りの曲とフュージョン曲が混在している。その後、再びジャズ/ロック・フュージョン寄りの方向へ戻り、『Second Wind』(1989年)と『Full Circle - Live 1988』を残している。
2002年には、Moerlenがロシア・サンクトペテルブルクでPentanineというロシア人ミュージシャンのグループとアルバムを制作している。さらに2005年には、新しいフランス人の若手メンバーで最後のプロジェクトに着手したが、Pierre Moerlenは2005年5月3日に52歳で急逝した。その後、残されたメンバーが彼の最後の楽曲と自作をまとめ、2010年に『Tribute』として追悼リリースしている。
Pierre Moerlen's Gongを追うなら、まず『Expresso II』とArista期の4作を押さえると流れが見えやすい。ここではGongの名前を残しながらも、実際には別のバンドのような作りに変わっている。ギター主導のロックではなく、打楽器のレイヤーを軸にしたフュージョン寄りの演奏を聴くバンドとして整理すると分かりやすい。
初期Gongの延長線で聴くと驚くかもしれないが、Moerlen期はその違い自体がポイントになっている。ロック、ジャズ、フュージョンの境目を行き来しながら、鍵盤打楽器を前面に出した作品を残したバンドとして記憶されている。