Vinyl Record Reviews
Pretty Lightsは、アメリカ・コロラド州デンバーを拠点に活動するエレクトロニック・ミュージック・プロデューサー、Derek Vincent Smithの名義だ。プロフィール上ではPretty Lights Musicの創設者としても知られている。ジャンルの表記はElectronic、Hip Hop、Funk / Soulで、スタイルにはTrip HopやDubstepが挙がっている。
Smithはフォート・コリンズで過ごした高校時代にロックバンドでベースを弾きながら、同時にヒップホップ・トラックの制作にも取り組んでいた。その後、コロラド大学に進学するが、1年で中退して音楽制作に専念している。
2006年のデビュー作『Taking Up Your Precious Time』以降、楽曲を自身のウェブサイトから無料でダウンロードできる形で公開してきた点も、このプロジェクトの特徴だ。最初は月50〜100件ほどだったダウンロード数が、2008年の2作目をきっかけに月1万件規模まで増えたとされている。収益の中心をライブに置く形で活動を広げ、クラブ規模からアリーナ級のヘッドライナーへと成長していった。
2011年には自身のレーベルPretty Lights Musicを立ち上げている。ここではPretty Lights本人の作品だけでなく、Michal MenertやGramatikらの作品も無料配布する体制を整えていた。単独の名義にとどまらず、周辺のアーティストを含めた配信の仕組みを作った点が、このレーベルの動きとして確認できる。
Pretty Lightsの音楽は、ヒップホップのビート感を軸にしながら、ソウルやファンク、エレクトロニックの要素を組み合わせた作りが中心だ。Trip HopやDubstepの要素も含まれていて、既存のジャンル名だけでは収まりにくい構成になっている。
Smithは影響源として、Pink Floyd、Led Zeppelin、Notorious B.I.G.、Billie Holidayなどを挙げている。ロック、ヒップホップ、ジャズ、ソウルまで幅広く参照していることがわかる。
サンプリングの方法も特徴的だ。2009〜2010年頃の作品では、ソウル、ブルース、フォーク、サウンドトラック、カントリーなどのレコードを探し回り、特に1960年代後半のヴァイナル盤の音質や質感を重視して素材を集めていた。その後は、Harlem Gospel ChoirやPreservation Hall Jazz Bandのメンバーらとセッションを録音し、それをいったんヴァイナルにプレスしてから、再びサンプリング素材として使う方法に移っている。
メンバー欄にはAlvin Ford Jr.の名前が挙がっている。Pretty Lightsはソロ名義のプロジェクトとして始まりつつ、ライブや制作の体制では複数のプレイヤーと関わる形も見られる。公開されている情報からは、無料配信、ライブ重視、サンプリングの再構築という3つの軸で活動してきたアーティストとして整理できる。