Vinyl Record Reviews
Red Boxは、イギリスのポップ・グループだ。中心メンバーはサイモン・トゥールソン=クラーク(ヴォーカル、ギター)とジュリアン・クローズ(サックス)で、1980年代前半にロンドンで活動を始めた。結成当初はHarlequinsという名前だったが、その後Red Boxに改名している。
1983年、Red Boxはデビュー・シングル「Chenko」を発表した。その後、編成は縮小してデュオ体制になり、シンセ・ポップ寄りのサウンドを強めていく。電子楽器を軸にしたポップ・ソングへ寄せながら、サックスを含む編成の名残も活動初期の特徴として残っている。
1985年8月に発表した「Lean On Me (Ah-Li-Ayo)」は全英3位を記録し、初のトップ10ヒットになった。翌1986年のアルバム『The Circle & the Square』では、多くのゲスト・ミュージシャンが参加している。この作品からは「For America」もシングル化され、全英10位を記録した。
Red Boxの音楽は、ElectronicとPopを軸にしたシンセ・ポップだが、単純に80年代型の合成音中心のポップに収まっていない。ブラス・アンサンブル、合唱、詠唱のような要素を取り入れ、ロックやシンセ・ポップと組み合わせている点が特徴として挙げられる。こうした作りは、1980年代のポップスの中でも、ワールド・ミュージック的な発想を持ち込んだ例として扱われることがある。
ジャンル表記ではLeftfieldも含まれていて、主流のポップスから少し外れた構成や音色の選び方がうかがえる。メロディだけで押し切るタイプというより、編曲や音の積み方に比重があるグループだ。
1980年代後半には契約上のトラブルで活動が止まり、1989年ごろに再始動した。この時期にはクローズの代わりにアラステア・ガヴィンが加わっている。再始動後の2作目『Motive』は十分なプロモーションが行われず、バンドはしばらくして事実上の活動停止状態に入った。
その後、トゥールソン=クラークは制作や他アーティストへの楽曲提供に関わっていく。Red Boxとしては2010年に3作目『Plenty』で復帰し、10月11日にリリースされた。現在はトゥールソン=クラークが中心となり、新しいバッキング・メンバーとともに活動している。
『Plenty』以降も活動は続き、ライヴでは特にポーランドで反応を集めた。「The Sign」と「Hurricane」は、ポーランドのラジオ番組「Lista Przebojów Trójki」でそれぞれ1位を記録している。2019年には『Chase the Setting Sun』も発表している。
Red Boxを追うなら、まず「Lean On Me (Ah-Li-Ayo)」と「For America」を押さえておくと、80年代のヒット曲としての輪郭がつかみやすい。アルバム単位では『The Circle & the Square』が、ブラスや合唱を含む編曲の特徴を確認しやすい作品だ。復帰後の『Plenty』や『Chase the Setting Sun』では、初期とは違う時期の編成と活動の続き方が見えてくる。
Red Boxは、イギリスのシンセ・ポップの流れの中で、ポップソングに異なる音楽要素を持ち込んだグループとして整理しやすい。80年代のヒット曲だけでなく、再始動後の動きまで含めて追うと、活動の断続とその都度の編成変化がはっきり見える。