Red Box - The Circle & The Square (1986)
Red Box 1986

Red Box - The Circle & The Square (1986)

Electronic Pop Synth-pop Leftfield

Red Box『The Circle & The Square』

Red Boxの『The Circle & The Square』は、1986年に発表された英国ポップ・グループの代表作で、80年代のシンセポップ文脈にいながら、民族音楽やワールド・ミュージックの要素を前面に押し出した一枚だ。中心はシモン・トールソン=クラークとジュリアン・クローズで、一般的なバンド編成のポップ作品というより、打ち込み、アコースティック楽器、サックス、合唱的なコーラスを組み合わせた、少し広い視野のある作りになっている。

作品の輪郭

このアルバムは、Red Boxにとって初期の到達点として見やすい。デビュー・シングル「Chenko」の時点では、まだバンド色の強い出発だったが、その後の編成整理を経て、よりシンセポップ寄りの方向へ移行し、この作品でまとまった形になった。実際、アルバム全体には、当時の英国ポップに多かった機械的な質感だけでなく、手触りのある楽器の音がしっかり残っている。アコースティック・ギターのストローク、フルートやサックスの入り方、コーラスの重ね方が、曲ごとに輪郭を変えながら配置されているのが印象的だ。

収録曲の中では「Lean On Me (Ah-Li-Ayo)」が特に知られている。1985年にUKトップ10ヒットになったこの曲は、アルバムの性格を端的に示す代表曲で、掛け声のようなフレーズとリズムの推進力が前に出る。「For America」も続くシングルとして存在感があり、アルバムの中でより大きなスケール感を与える役割を持っている。どちらも、単純なダンス・ポップとは違う、歌とリズムの組み立てで引っ張るタイプの楽曲だ。

1986年作品としての位置づけ

Red Boxのこのアルバムは、同時代の英国ポップの中でも少し外側に立っている。New OrderやOMDのような電子音主体の流れ、あるいは一般的なニュー・ウェーブの枠組みと比べると、より有機的で、参照先が広い。AllMusicがnew wave、pop、world musicの交差点にある作品として高く評価しているのも、その組み立てを見れば納得しやすい。派手なヒット作として消費されるより、後から内容面で見直されやすいタイプのアルバムだ。

商業面では、英国アルバム・チャート最高73位という記録が残っている。大きなセールスを前提にした作品ではなく、むしろシングルの成功によってアルバムの存在が広がった流れが見える。とはいえ、アルバム全体を通して聴くと、ヒット曲だけが目立つ作りではなく、曲間のつながりや音色の統一感がはっきりしている。複数のスタジオで録音され、デヴィッド・モーションやフィル・ブラウンらが制作に関わったことも、音の層の厚さにつながっている。

日本盤について

今回の日本盤は1987年リリースで、オリジナルの1986年盤から少し遅れて登場したものになる。レーベルはWEA、型番はP-13441。日本盤らしく、当時の洋楽ポップを国内で手に取りやすい形にした一枚で、オリジナル作品の内容をそのまま伝える役割が強い。Red Boxのアルバムは、英国本国での大ヒット盤というより、輸入盤や国内盤を通じてじわじわ触れられてきた印象があるので、日本盤の存在はありがたい。

聴きどころ

この作品の面白さは、曲の構造がシンプルに見えて、音の配置がかなり細かいところにある。リズムは前へ進むが、上に乗るメロディやコーラスは直線的すぎない。サックスやフルートが入る場面では、80年代ポップの中でも少し異なる空気が生まれる。打ち込み中心の音像に、手で吹かれた管楽器やアコースティックな響きが混ざることで、都市的な印象と土の匂いのような感触が同居している。

Red Boxはこのあと契約上の問題などで活動が止まり、次の展開まで時間が空く。そうした経緯もあって、この『The Circle & The Square』はバンドの初期像をもっともよく示す作品として見やすい。ヒット曲を含みつつ、アルバム全体ではかなり個性的な音作りをしているため、80年代英国ポップの中でも輪郭がはっきりした存在になっている。

シングルで知ると明快、アルバムで追うと構成の細かさが見える。そういうタイプの一枚だ。

トラックリスト

  1. Round Side
  2. A1 For America 3:43
  3. A2 Heart Of The Sun 4:06
  4. A3 Billy's Line 4:48
  5. A4 Bantu 4:17
  6. A5 Living In Domes 5:37
  7. A6 Lean On Me (Reprise) 1:12
  8. Square Side
  9. B1 Chenko (Tenka-Io) 4:27
  10. B2 Lean On Me (Ah-Li-Ayo) 4:18
  11. B3 Saskatchewan 3:53
  12. B4 Leaders In Seventh Heaven 5:02
  13. B5 Walk Walk 4:37
  14. B6 Amen 0:30

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
Share
戻る

あわせて聴きたい "Leftfield"

toast