Vinyl Record Reviews
Reuben Wilsonは、1935年4月9日にオクラホマ州マウンズで生まれたアメリカのジャズ・オルガン奏者だ。2023年5月26日にニューヨーク・ハーレムで88歳で亡くなった。ソウル・ジャズを軸に、ハモンド・オルガンの演奏で知られるミュージシャンである。
ウィルソンは5歳のときに家族とともにカリフォルニア州パサデナへ移住した。ロサンゼルスではドラマーのアル・バーティーらと活動し、その後1966年のクリスマスにニューヨークへ移った。ハーレムのクラブで深夜のジャムセッションを重ねるなかで、サックス奏者ウィリス・“ゲイター”・ジャクソンとのオルガン共演が注目を集め、その演奏がブルーノート・レコードのフランシス・ウルフの目に留まったとされている。
その後、1968年の『On Broadway』でブルーノートからデビューした。ここから複数のアルバムを発表し、ソウル・ジャズのオルガン奏者として活動を広げていく。
Reuben Wilsonの演奏は、ハモンド・オルガンを前面に出したソウル・ジャズが中心だ。ジャズの即興性に加えて、リズムの強さやグルーヴを重視した作品が多い。1960年代後半から1970年代にかけて、クラブ向けの感覚を持ったオルガン・ジャズを継続して録音している。
代表作の一つに数えられる1975年の『Got to Get Your Own』でも、その路線が確認できる。メルヴィン・スパークス、グラント・グリーン、ボビー・ハッチャーソン、ハービー・ルイス、エディ・ウィリアムズ、ジョージ・フリーマンら、同時代のジャズ・ミュージシャンとの共演も多い。自身が率いたローカルバンド「Wildare Express」でも活動していた。
70年代後半以降は活動が徐々に減り、80年代初頭にはいったん音楽シーンから離れた。その後、90年代に入ると、彼の楽曲がヒップホップやアシッド・ジャズの文脈でサンプリング素材として再評価されるようになる。
特に1971年の「We're in Love」は、DJプレミアによってサンプリングされ、ナズの1994年のデビュー作『Illmatic』収録曲「Memory Lane (Sittin' In Da Park)」の核になったことで知られている。ほかにも、A Tribe Called Quest、Us3、Brand New Heaviesの楽曲で彼の音源が使われている。
この再評価を受けて、ウィルソン自身も演奏活動に戻った。ラッパーのグールーが率いる「Jazzmatazz」のセッションやツアーにも参加している。オルガン・ジャズの演奏家としての活動が、後のヒップホップ世代にもつながっていった流れが見える。
『On Broadway』: ブルーノートでのデビュー作
『Got to Get Your Own』: 代表作の一つ
「We're in Love」: 後年のサンプリングでも注目された楽曲
Reuben Wilsonは、ソウル・ジャズのオルガン奏者として活動しながら、後年はサンプリングを通じて別の世代にも届いたミュージシャンだ。ブルーノートでの録音、ハーレムのクラブでの活動、そしてヒップホップ以降の再評価まで、経歴を追うとジャズとその周辺の変化がそのまま見えてくる。