Vinyl Record Reviews
Roberto Musciはミラノ出身の音楽家だ。アルトサックスとギターを学び、1974年から1985年にかけてはアフリカ、インド、中近東、極東を旅しながら各地の音楽を現地録音してきた。あわせて、世界各地の民族楽器を研究・収集してきた経歴を持つ。
作品はElectronic、Folk、World、& Countryの領域にまたがり、Downtempo、Ambient、Experimental、African、Tribalといったタグでも紹介されている。LPやCDは、Raw Materials、Victò、Recommended Records、Lowlands、Auditorium、Voiceprint / Gonzo Multimedia、Island Records、Music from Memory、Soave Records、Goodfellas Records、Oxmose Recordsなど、複数の欧州レーベルから発表している。
音源制作だけでなく、映画、映像作品、CM、ダンス、無声映画のライブサウンドトラック、詩や演劇のための音楽も手がけている。ラジオでは、80年代から90年代にかけてRaiやRadio Popolareで民族音楽や電子音楽、実験音楽の番組を担当していた。
Roberto Musciの代表作としてよく挙げられるのが、『Water Messages On Desert Sand』だ。この作品はGiovanni Venostaとの共作で、サンプラー、シンセサイザー、ギター、ピアノ、エフェクト、テープを使いながら、アフリカ、インドネシア、アジア、インドのフィールド録音を中心に組み立てられている。1987年にRecommended Recordsから発表され、後年はMusic from MemoryやReRなどから再発されている。
この作品はBrian EnoとDavid Byrneの『My Life in the Bush of Ghosts』と並べて語られることがあるが、再発を重ねている点からも、今なお聴き直されている作品として扱われている。
Musciの音楽では、現地録音した音、民族楽器、電子音響が一つの作品の中で組み合わされる。単純に「ワールド・ミュージック」として片づけるより、録音素材の扱い方や編集の仕方に耳が向くタイプだ。アフリカやアジアの音楽を参照しながら、サンプル、テープ、シンセサイザーを使って構成する手法が、作品の中心にある。
また、彼はタッチ式やレーザー式のデジタルギター・インターフェース「Extended Guitar」を開発し、動きや音声入力、ライブカメラに反応して映像と音が同時に変化するオーディオ・ビジュアル・インスタレーションも制作している。音楽とテクノロジーを行き来する活動が長く続いている。
80年代以降は、Giovanni Venosta、Claudio Gabbiani、Walter Prati、Giorgio Magnanensi、Massimo Cavallaro、Tiziano Tononi、Daniele Cavallanti、Massimo Mariani、Moni Ovadia、Chris Cutler、Jon Rose、David Moss、Steve Piccolo、Elliott Sharp、Keith Tippett、Third Ear Bandなど、多くのイタリア、ヨーロッパ、アメリカの音楽家と共演している。
さらに、Zeppelin Universityで、フランスの社会学者Pierre Bourdieuによる写真・映像展示の制作にも関わっている。音楽制作だけでなく、映像や展示の領域にも活動が広がっている。
Roberto Musciを初めて聴くなら、『Water Messages On Desert Sand』から入るのが分かりやすい。フィールド録音、民族楽器、電子音響の組み合わせが、彼の仕事をまとまった形で示している。あわせて、映画音楽やインスタレーションの活動を追うと、音だけでなく映像や空間を含めた制作姿勢も見えてくる。
世界各地の音楽を現地で録音し、それを電子音響の枠組みに入れていく。Roberto Musciは、その作業を長く続けてきたアーティストだ。