Vinyl Record Reviews
Sagittariusは、1960年代後半のアメリカでゲイリー・アッシャーが中心になって動かしたスタジオ・プロジェクトだ。実質的にはアッシャーの企画色が強く、そこにカート・ベッチャーがソングライター、演奏者、共同プロデューサーとして深く関わっている。ほかにも、The Millenniumの『Begin』に参加していたセッション・ミュージシャンたちが多数加わっている。
サジタリアス名義が最初に使われたのは、1967年のシングル「My World Fell Down」だ。この曲はもともとチャド&ジェレミー向けに書かれたアイヴィー・リーグの楽曲だったが、録音されなかったため、アッシャーが自身のプロジェクトとしてまとめた。1968年にはコロムビアから1stアルバム『Present Tense』を発表し、1969年には2作目『The Blue Marble』をトゥゲザー・レコードから出している。
「My World Fell Down」は、ビーチ・ボーイズの『Pet Sounds』から『Smile』期を思わせるコーラスワークとオーケストレーションが目立つ。そこにカーニバルや闘牛の効果音を差し込み、途中にミュージック・コンクレート風のブリッジを入れる構成になっている。ポップソングとしてのまとまりと、スタジオ編集を使った実験性が同居しているのが特徴だ。
全体の方向性としては、ロックの枠に収まりつつ、サイケデリック・ロックとソフト・ロックの要素が前に出ている。サジタリアスは、当時のサイケデリック・ポップやソフトサイケの文脈で語られることが多い。
サジタリアスはバンドというより、1960年代後半のスタジオ制作を背景にしたプロジェクトとして見るのが近い。シングル「My World Fell Down」は、実験的な構成とコーラス主体のアレンジで知られ、当時のサイケデリック・ポップの代表的な例として扱われている。チャート上の成績は全米70位だったが、作品単位では今も参照されることが多い。
サジタリアスを追うと、1960年代末のアメリカ西海岸で進んでいたスタジオ主導の制作、コーラス重視のポップ、そしてサイケデリックな音響処理が、ひとつの形でまとまっているのが見えてくる。