Sagittarius - Present Tense (1968)
Sagittarius 1968

Sagittarius - Present Tense (1968)

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Sagittarius『Present Tense』について

Sagittariusの『Present Tense』は、1968年に発表されたスタジオ・プロジェクト色の強いアルバムである。中心にいるのは、プロデューサー/ソングライターのGary Usherと、アレンジ面でも大きく関わったCurt Boettcher。固定メンバーのロック・バンドというより、当時の西海岸ポップの制作陣が集まって作り上げた作品として理解すると、輪郭がつかみやすい。ジャンルの軸はソフト・ロックとサイケデリック・ロックだが、単に柔らかいだけではなく、録音の重ね方や曲の切り替えにかなり手が込んでいる。

この作品が面白いのは、1960年代後半のサンシャイン・ポップやバロック・ポップの流れを、かなり精密にまとめている点にある。軽やかなメロディ、厚みのあるコーラス、スタジオで組み立てたような音像が並び、当時のロックの荒さとは別の方向に進んでいる。のちに再評価が進んだのも納得できる内容で、時代の流行にそのまま乗るタイプではなく、作り込みそのものが聴きどころになっている。

制作の中心にあるもの

『Present Tense』は、Gary Usherの企画性とCurt Boettcherのコーラス・センスが核になっている。Usherは曲作りとプロデュースの両面で全体をまとめ、Boettcherは声の重なりや音の配置で独特の立体感を与えている。そこにWrecking Crew系のスタジオ・ミュージシャンが加わり、演奏の精度と録音の密度が保たれている。バンドの生演奏感を前面に出すというより、曲ごとに必要な音を積み上げていく制作方法で、60年代後半のスタジオ作品らしい性格がはっきりしている。

同時期に制作されたThe Millenniumの『Begin』と並べて語られることが多いのも自然で、どちらもUsher/Boettcher周辺の美学を強く示す作品である。片方がバンド作品というよりスタジオ・プロジェクトとして立ち上がっている点も共通している。こうした背景を踏まえると、Sagittariusは単独のグループ名というより、当時のポップ制作の実験場のような存在だったとも言える。

代表曲「My World Fell Down」

このアルバムを語るうえで外せないのが「My World Fell Down」である。Billboardで70位まで上昇したシングルで、作品の中では最も知られた曲のひとつだ。Glen Campbellがリード・ヴォーカルを担ったとされ、曲の進行も単純なポップ・ソングに収まっていない。途中で展開が切り替わる構成が特徴で、ビーチ・ボーイズの『Smile』を連想させるという指摘もある。実際、穏やかなメロディの中に、少し不穏な切り替わりや組曲的な感触が入り込み、60年代後半らしい実験性が見える。

この曲がアルバム全体の印象を決めている面もある。きれいに整ったコーラスだけでなく、曲の内部に変化を持たせることで、単なる甘いポップでは終わらない。サイケデリック・ロックの文脈で見ても、派手なギターや長尺の即興ではなく、アレンジの積み方で異化していくタイプの実験性である。

1968年という位置づけ

オリジナルのリリースは1968年7月ごろとされる。商業的には大きな成功作ではなかったが、60年代ポップの完成度を示す一枚として後年の評価が高まった。重いロックが主流へ寄っていく時代にあって、こうした繊細で緻密な作品は埋もれやすかったはずだが、逆にその緻密さが現在では価値として見直されている。

Sagittariusにとっては、Gary UsherとCurt Boettcherの美学が最もわかりやすく表れた作品のひとつであり、The Millennium周辺の流れを理解するうえでも重要な位置にある。サンシャイン・ポップ、ソフト・ロック、サイケデリック・ロックの境目に置くと、当時のスタジオ制作がどこまで到達していたかが見えてくる。

1985年のBack-Trac盤について

ここで扱っているのは1985年にUSのBack-Trac Records & Tapesから出た再発盤である。オリジナルの1968年盤とは発売時期が異なり、80年代の再発レーベルによる流通という点がポイントになる。Back-Tracはブルックリンの再発レーベルとして知られており、こうした盤はオリジナルを追いにくかった時期に、60年代作品へ再び触れる入口になっていた。音源や装丁の細部は盤ごとに差が出ることがあるが、少なくとも作品としては1968年の内容を伝える再発盤として見るのが自然である。

まとめ

『Present Tense』は、Sagittariusという名義の下で、Gary UsherとCurt Boettcherが60年代後半のポップ制作を高い密度でまとめたアルバムである。ヒット曲「My World Fell Down」を軸に、コーラス、アレンジ、録音の作り込みがはっきりした一枚。バンドの勢いで押す作品ではなく、スタジオで組み上げた音そのものを聴かせる内容で、同時代のThe Millennium『Begin』と並べて見ると背景もつかみやすい。1968年のオリジナル盤、そして1985年の再発盤という流れの中で、長く語られてきた理由が見えてくる作品である。

トラックリスト

  1. A1 Another Time
  2. A2 Song To The Magic Frog (Will You Ever Know)
  3. A3 You Know I've Found A Way
  4. A4 The Keeper Of The Games
  5. A5 Glass
  6. A6 Would You Like To Go
  7. B1 My World Fell Down
  8. B2 Hotel Indiscreet
  9. B3 I'm Not Living Here
  10. B4 Musty Dusty
  11. B5 The Truth Is Not Real

動画

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