Vinyl Record Reviews
Simply Redは、1984年にマンチェスターで結成されたイギリスのソウル/ポップ・バンドだ。中心人物はヴォーカル兼ソングライターのMick “Red” Hucknallで、The Durutti Columnの元メンバーだったTony Bowers、Chris Joyce、Tim Kellettに、Sylvan Richardson、Fritz McIntyreが加わってスタートしている。バンド名は、Hucknallの愛称「Red」に由来し、彼の赤毛とマンチェスター・ユナイテッドへの愛着とも重なっている。
デビュー作は1985年の『Picture Book』。ここからヒットが生まれ、バンドは一気に注目を集めた。とくに「Holding Back The Years」は重要な曲で、もともとはHucknallが以前率いていたパンク・バンドThe Frantic Elevators時代の楽曲だった。この曲は当時のオリジナル版では大きなヒットにならなかったが、Simply Redとして再録音された1986年版が全米ビルボードで1位を記録し、代表曲のひとつになっている。
ジャンルはRock、Pop、Funk / Soulにまたがるが、実際の軸はソウル、リズム・アンド・ブルース、バラードにある。Mick Hucknallの歌声を前面に置いた作りが多く、メロディをはっきり聴かせる曲が中心だ。派手な演奏で押すタイプではなく、歌と曲の流れを重視した構成が目立つ。
代表曲の並びを見ると、その方向性はかなりわかりやすい。「Money's Too Tight (To Mention)」「Holding Back The Years」「The Right Thing」「If You Don't Know Me By Now」「Something Got Me Started」「Stars」「Fairground」「Sunrise」など、バラードとグルーヴ感のある楽曲が両方そろっている。
1991年の4作目『Stars』は、Simply Redのキャリアで特に大きな作品だ。全英アルバムチャートで初登場1位を記録し、その後19週にわたって首位を維持した。この年の売れ行きは1991年と1992年の2年連続で英国年間ベストセラー・アルバムにつながっている。シングル曲の強さだけでなく、アルバム全体の支持がかなり大きかったことがうかがえる。
Simply Redはメンバー交代が多いバンドでもある。1996年の5作目『Life』の時点で、オリジナル・メンバーはMick Hucknallだけになっていた。その後、「Simply Red」という名前は、実質的にHucknallのブランドとして運営されるようになる。
2000年にレーベルを離れたあと、バンドは自分たちのサイトであるsimplyred.comを立ち上げ、そこをレーベルとしても使いながら2003年の『Home』以降をリリースしている。2010年にはフェアウェル・ツアーでいったん活動を終えたが、2015年に結成30周年を記念して再始動し、『Big Love』を発表した。
Simply Redの歩みを見ると、1980年代のUKソウル/ポップの流れの中で出てきて、90年代に大きく広がり、その後はHucknall主導のプロジェクトとして継続してきた形がはっきりしている。特に「Holding Back The Years」の再録音が世界的ヒットになったことや、『Stars』が長期間チャートの上位を保ったことは、楽曲単位でもアルバム単位でも強い存在感を残している。
ソウル寄りの歌ものが好きなら、Simply Redはかなり追いやすいバンドだ。歌を中心に据えたポップスとR&Bの作りが、作品ごとにきちんと積み重なっている。