Vinyl Record Reviews
Stanley Cowellは、1941年5月5日にアメリカ・オハイオ州トレドで生まれ、2020年12月17日にデラウェア州ドーバーで亡くなったジャズ・ピアニストだ。ジャズの文脈では、Spiritual Jazz、Free Jazz、Free Improvisationの領域で語られることが多い。
カウエルはオーバリン・カレッジ音楽院とミシガン大学で音楽を学び、在学中にはラサーン・ローランド・カークとも共演している。1966年にニューヨークへ移ると、活動の場を広げ、マリオン・ブラウン、マックス・ローチ、ボビー・ハッチャーソン、ハロルド・ランドらと定期的に共演した。
1970年にマックス・ローチのバンドを離れた後は、トランペット奏者チャールズ・トリヴァーとMusic Incを結成した。しかし当時は自分たちの音楽を出せるレーベルが見つからず、1971年に2人でStrata-Eastを立ち上げている。Music Incの音源を最初にリリースしたのもこのレーベルだった。
Strata-Eastは、アーティストがマスター音源の権利を保持できる仕組みを取り、ジャズが商業的に厳しかった時代に、黒人ミュージシャンたちの自主的な発表の場として機能した。カウエル自身のソロピアノ作『Musa: Ancestral Streams』(1973年)も、このレーベルから出ている。
創作の中心にいた時期のあと、カウエルは演奏活動の第一線から少し距離を置き、教育者としても活動した。アマースト・カレッジ、ニューヨーク市立大学リーマン・カレッジ、ニューイングランド音楽院、ラトガース大学で教え、後進の指導に力を入れた。
カウエルの名前は、スピリチュアル・ジャズ、フリー・ジャズ、フリー・インプロヴィゼーションの流れと結びつけて語られることが多い。譜面通りに進むだけではない展開、即興の比重、ハーモニーやリズムの自由な扱いが、彼の作品や共演歴の中で見えてくる。
特に『Musa: Ancestral Streams』では、ソロピアノという編成の中で、和声の組み立てや音の間の取り方に重点が置かれている。バンドでの活動だけでなく、ひとりで完結する形でも存在感を示した作品として知られている。
Strata-Eastの設立は、カウエルの活動の中でも重要な出来事だ。大手レーベルに依存せず、自分たちで制作と発表の場を作る動きは、その後のジャズやインディペンデントな音楽制作の考え方にもつながっていく。
また、彼が教育の現場に長く関わったことも見逃せない。演奏家としての実践と、大学での指導の両方を通して、次の世代にジャズの考え方や演奏の方法を伝えていた。
Stanley Cowellは、演奏家、レーベル設立者、教育者という複数の役割を持ちながら、ジャズの現場に長く関わった人物だ。共演歴、レーベル運営、ソロ作品、教育活動がそれぞれつながっていて、彼の仕事ぶりを追うと、1970年代以降のジャズの動きも一緒に見えてくる。