Vinyl Record Reviews
Stereolabは、1990年にロンドンでティム・ゲインとラエティシア・サディエによって結成されたバンドだ。国籍はイギリスを中心に語られることが多いが、サディエがフランス出身であることもグループの重要な要素になっている。活動開始は1990年、2009年まで継続し、その後は約10年の活動休止期間を挟んで、2019年にライヴで再始動した。2025年には2009〜2010年以来となる新録音源の発表もある。
結成当初のStereolabは、ティム・ゲインのレコード・コレクターとしての視点と、ラエティシア・サディエの歌声を軸に動き始めた。90年代前半からメンバーの入れ替わりを重ねつつ、作品を継続的に発表していく。1992年にはメアリー・ハンセンが参加し、サディエとの掛け合いがバンドの大きな特徴になった。
1996年の『Emperor Tomato Ketchup』では、従来の要素に加えてジャズ、ヒップホップ、ダンス・ミュージックの感覚も取り入れている。2002年にはメアリー・ハンセンが事故で死去し、その後の『Margerine Eclipse』(2004年)には彼女への追悼の意味合いが強く反映されているとされる。2009年以降は長期の休止に入り、2019年に再結成してライヴ活動を再開した。再結成は、7枚のアルバム再発キャンペーンとも連動していた。
Stereolabのサウンドは、クラウトロックの反復的なモトリック・ビートを土台にしている。そこへラウンジ・ミュージック、60年代ポップ、ヴィンテージのアナログ・シンセサイザーやオルガンを組み合わせているのが特徴だ。ジャンル分けではElectronic、Rock、Experimental、Indie Rock、Synth-pop、Space Rockあたりにまたがる。
楽曲では、英語とフランス語を行き来する女性ヴォーカルが目立つ。サディエの歌唱に加え、時期によってはハンセンや他のメンバーがコーラスやヴォーカルを担っている。シングル「Ping Pong」は、歌詞にマルクス主義的・革命的な要素が見られる曲として知られている。
メンバーは時期によって変化が多く、固定的な編成というより、ゲインとサディエを中心に人員が入れ替わりながら続いてきた。ベース、ドラム、キーボード担当が時期ごとに変わっているのもこのバンドらしいところだ。
Stereolabは、70年代クラウトロックの反復性を、90年代以降のインディ・ロックやエレクトロニックの文脈に接続したバンドとして扱われることが多い。ロックの編成を使いながら、シンセやオルガン、リズムの反復を前に出す作りは、同時代のオルタナティヴ・ロックとは少し違う位置にある。
また、音の作りだけでなく、政治的な語りを含む歌詞や、英仏混交のヴォーカルもバンドの識別点になっている。自主レーベルDuophonicを拠点に活動してきたことも含めて、作品単位で追いかける楽しさがあるグループだ。
まずは「Ping Pong」や『Emperor Tomato Ketchup』あたりから入ると、Stereolabの基本がつかみやすい。そこから初期作、2000年代の作品、そして再結成後の動きへ進むと、バンドの変化も追いやすい。2025年の新録音源は、長い休止を経た現在のStereolabを確認するうえで気になるところだ。
公式サイトやBandcamp、SNSでも動向が追えるので、最新情報を見ながら聴き直すのもよさそうだ。