Vinyl Record Reviews
Steven Wilsonは、1967年11月3日にイングランド・ハートフォードシャー州ヘメル・ヘムステッドで生まれた英国のミュージシャンだ。ロックを軸に、Prog RockやArt Rockの文脈で知られている。Porcupine Treeの創設者であり、リード・ギター、ボーカル、ソングライティングを担ってきた人物として広く認識されている。
Steven Wilsonは1987年にPorcupine Treeを自身のソロ・プロジェクトとして始めた。その後、1993年に元JapanのRichard Barbieriらを迎えてバンド編成へ移行している。初期のPink Floydを思わせるサイケデリアを土台にしながら、トランスやアンビエントの要素、硬質なギター、複雑なリズム感を組み合わせたサウンドを展開してきた。
『Signify』(1996年)、『Stupid Dream』(1999年)、『In Absentia』(2002年)、『Fear of a Blank Planet』(2007年)などのアルバムは、国際的にも評価を集めた。1991年から2022年にかけて通算11枚のスタジオ・アルバムを残しており、プログレッシブ・ロックの再評価やリバイバルに大きく関わった存在として扱われている。
2008年以降は自身の名義での活動を本格化させている。ソロ作品では、プログレッシブ・ロックの構成を保ちながら、電子音楽、ポップ、アンビエントの要素を取り込んでいる。代表作には『Grace for Drowning』(2011年)、『The Raven That Refused to Sing (and Other Stories)』(2013年)、『Hand. Cannot. Erase.』(2015年)がある。『Hand. Cannot. Erase.』は全英チャートでトップ40入りした。
これらの作品の一部は、グラミー賞の「ベスト・サラウンド・サウンド・アルバム」部門にもノミネートされている。楽曲の作り込みと音像の設計の両方に力を入れている点が、ソロでもはっきり出ている。
Steven Wilsonの音楽は、プログレッシブ・ロックの長い展開や構成の変化を持ちながら、現代的なロックの演奏感も入っている。ギターは前面に出る場面が多く、リズムの切り替えも細かい。Porcupine Treeではバンド・サウンドを軸にしつつ、ソロでは電子音やアンビエントの比重が増えている。
アート・ロックの文脈では、楽曲の構成や音の配置に注意が向けられている。ストレートなロックだけでは収まらない作り方を続けてきたミュージシャンとして見られている。
Steven Wilsonは、サウンド・エンジニアやプロデューサーとしても評価されている。The Who、Rolling Stones、Pink Floyd、Black Sabbath、King Crimson、Genesis、Jethro Tullなど、多くの重要作のサラウンド・リミックスやリマスターを手がけてきた。プロデュース/ミックスの実績は100件を超えるとされている。
こうした仕事により、古い録音を新しい再生環境に合わせて整理し直す役割も担ってきた。新旧のプログレ・ファンをつなぐ存在として語られることが多い。
ソロやPorcupine Tree以外でも、複数のプロジェクトに関わっている。No-Man、Bass Communion、Storm Corrosion、Blackfieldなどがその例だ。いずれも活動の形は異なるが、Steven Wilsonの作曲、演奏、制作の手腕が反映されている。
Steven Wilsonは、バンド活動、ソロ作品、リミックス/リマスター業務まで幅広く動いているミュージシャンだ。Porcupine Treeでの仕事とソロでの展開を並べて追うと、プログレッシブ・ロックを現代の制作環境に合わせて更新してきた流れが見えてくる。