Vinyl Record Reviews
Suzanne Vegaは、1959年7月11日生まれのアメリカのシンガーソングライターだ。カリフォルニア州サンタモニカで生まれ、2歳半のころにニューヨークへ移り、スパニッシュ・ハーレムやアッパー・ウェストサイドで育った。1962年以降はニューヨークを拠点に活動している。
ジャンルはRock、スタイルはPop Rockに分類されることが多い。公式サイトやSNS、Bandcamp、YouTube、AllMusicなどで現在も情報を追うことができる。
11歳でギターを始め、パフォーミング・アーツ高校ではモダンダンスを学んだ。その後、バーナード大学在学中にグリニッジ・ヴィレッジのフォーク・シーンで演奏を始める。1983年にA&Mと契約し、1985年にセルフタイトルのデビュー・アルバム『Suzanne Vega』を発表した。
この時点で、すでに作詞と弾き語りを軸にした活動の形ができていたようだ。ニューヨークのフォーク・シーンで育った背景は、その後の楽曲にもつながっている。
1987年のセカンド・アルバム『Solitude Standing』は、全米で100万枚以上を売り上げ、批評面でも商業面でも大きな成功を収めた。この作品で広く知られるようになった楽曲が「Luka」と「Tom's Diner」だ。
「Luka」は虐待を受けた少年の視点で書かれた曲で、当時のポップ・ヒットとしては扱われるテーマがかなり異なる。UKトップ40入りも果たしている。ヴェガ自身はのちに、この曲が自身の継父から受けた虐待の経験を反映したものだと明かしている。
「Tom's Diner」はもともとアカペラ曲で、1990年にDNAによってダンス・トラックとしてリミックスされ、5カ国でトップ10ヒットになった。原曲のアカペラ音源は、MP3圧縮技術の開発段階でリファレンス音源として使われたため、Suzanne Vegaは「Mother of MP3」とも呼ばれている。
彼女の作詞は、Lou Reed、Bob Dylan、Leonard Cohenらの影響を受けた内省的で物語性のある書き方が特徴とされる。実際の人物や場所が見えてくるような書き方が多く、日常の会話や視点の置き方が曲の中で重要になっている。
サウンド面では、フォークを土台にしつつ、ポップ・ロックの枠に収まる楽曲が多い。ギター弾き語りを中心にしながら、曲によってはアレンジを広げていく作り方が見られる。
ニューヨークのフォーク・シーンから出てきたシンガーソングライターとして、1980年代のポップスの中で独自の存在感を持っている。特に「Luka」のように、重いテーマを明快なメロディに乗せる手つきは印象に残る。
また、「Tom's Diner」がMP3開発の参照音源として使われたことも含めて、音楽作品としてだけでなく、音声圧縮技術の歴史にも名前が残っている。楽曲がヒットしただけでなく、別の領域でも参照される点がSuzanne Vegaらしいところだ。