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The Flying Lizardsは、1976年にイングランドで結成された実験性の強いポップ・グループだ。中心人物はプロデューサーのDavid Cunninghamで、そこにDavid Toop、Steve Beresford、Deborah Evans-Stickland、Michael Upton、Julian Marshall、Patti Palladin、Sally Peterson、Bob Blackなど、流動的なメンバーが加わる形で活動していた。固定バンドというより、参加者が入れ替わるコレクティブ的なプロジェクトとして見るほうが近い。
バンドは1976年に始まり、1984年に解散した。スタジオ・アルバムは3枚で、ヴォーカリストも作品ごとに変わっている。
この編成の変化自体が、The Flying Lizardsの性格をよく示している。特定の顔ぶれを固定せず、その時々の参加者で音を組み立てるやり方だ。
1979年7月に発表したBarrett Strongのソウル・クラシック「Money (That's What I Want)」のカバーで、The Flying Lizardsは広く知られるようになった。この曲は全英シングルチャートで5位、米ビルボードHot 100でも50位まで上昇している。ニューウェイヴやno waveの文脈で語られることが多く、一発屋的なヒットとしても扱われている。
ただ、単なるカバーのヒットで終わるタイプのグループではない。制作費はわずか6ポンド50ペンスだったとされ、かなり限られた条件の中で録音されている。David Cunninghamはピアノの弦にショパンの楽譜、ガラスの灰皿、ゴム製の玩具、カセットレコーダー、電話帳などを挟み込み、独特の音を作っていたという。こうした方法が、そのままポップ・ソングの録音に使われている。
The Flying Lizardsの音楽は、ElectronicとRockを軸にしつつ、Experimental、Leftfieldの要素が強い。一般的なロック・バンドの演奏感よりも、音の配置や録音の仕方が前に出る。
特に「Money」では、Deborah Evans-Sticklandの感情を抑えたような歌い方が印象を残す。歌を強く押し出すというより、言葉をそのまま置いていくようなスタイルで、曲全体の機械的な感触と結びついている。ここでは、ポップ・ソングの形を保ちながら、その中身をかなりずらしている。
David Cunninghamを中心に、即興演奏家や別のミュージシャンが入れ替わりながら関わっていた点も重要だ。The Flying Lizardsは、完成されたバンド・サウンドを目指すというより、実験的な手法をポップの枠に持ち込む場として機能していた。
関わった名前を見ると、David ToopやSteve Beresfordのような実験音楽寄りの演奏家も入っているし、Patti Palladinのように別のバンドで活動していた人物も参加している。こうした人選からも、The Flying Lizardsがジャンルの境界をまたぐプロジェクトとして動いていたことがわかる。
また、アルバムごとにヴォーカリストが変わる構成は、同じグループ名でも作品ごとに手触りが変わる理由になっている。『The Flying Lizards』『The Fourth Wall』『Top Ten』を並べて聴くと、曲の組み立て方や声の使い方に差がある。
The Flying Lizardsは、ニューウェイヴや実験音楽の周辺で語られることが多い。特に「Money」は、ポップ・ソングを崩しながらも成立させた例として扱われることがある。低予算で作られた録音、特殊な音作り、抑制されたヴォーカルという要素が重なって、当時のポップの作法とは少し違う方向を示していた。
活動期間は長くないが、作品ごとに編成を変えながら、ポップと実験のあいだを行き来した点がこのグループの特徴だ。The Flying Lizardsを追うと、1970年代後半から1980年代前半にかけての実験的なポップのあり方が見えやすい。