The Flying Lizards = フライング・リザース - The Flying Lizards = ミュージック・ファクトリー (1980)
The Flying Lizards 1980

The Flying Lizards = フライング・リザース - The Flying Lizards = ミュージック・ファクトリー (1980)

Electronic Rock Experimental Leftfield

The Flying Lizards『ミュージック・ファクトリー』(1980)

フライング・リザースのデビュー作『The Flying Lizards』は、1980年にVirginから登場した実験的なポップ作品だ。日本盤では『ミュージック・ファクトリー』の題で発売されている。中心人物はデヴィッド・カニンガムで、ポップ・ソングの骨格をそのまま使いながら、演奏の置き方や間の取り方をずらし、普通のロック・アルバムとは違う感触を作っている。電子音楽、ロック、レフトフィールド、実験といった要素が同居する内容で、当時のニューウェイヴ周辺とも響き合う一枚だ。

作品の成り立ちと位置づけ

フライング・リザースは1976年にイングランドで結成されたプロジェクトで、固定バンドというより、カニンガムを軸に人員が入れ替わる形で活動した。デビュー作の本作では、デボラ・エヴァンス=スティックランドが主にボーカルを担当している。グループの知名度を大きく押し上げたのは先行シングル「Money」で、デッドパンな歌い方と、切れ切れのピアノ、隙間の多いアレンジが印象に残る曲だ。原曲の持つリズムの強さを残しつつ、演奏を意図的にぎこちなく見せる作りで、ヒット曲でありながらかなり変則的な仕上がりになっている。

アルバム全体も、その「Money」の延長線上にある。ポップ・ソングの形式を借りながら、反復、空白、断片的な音の配置で構成していく作りで、歌ものとしてのまとまりより、音の置き方そのものが前面に出る。後の作品『The Fourth Wall』や『Top Ten』に比べると、最初の一枚らしい勢いと企画性が強い。

同時代の文脈

カニンガムは、ジョン・ケージ、テリー・ライリー、スティーヴ・ライヒらの影響を受けたとされ、そうした前衛音楽の感覚をポップの形式へ持ち込んだ点が、この作品の核になっている。1970年代末から1980年初頭の英国では、パンク以後の実験性とポップの接近が進んでいたが、フライング・リザースはその中でもかなり極端に、曲を「普通に演奏しない」方向へ振れている。ダブ的な余白や、即興的に見える音の置き方も目立ち、当時のニューウェイヴやアート・ロックの周辺に置くと輪郭が見えやすい。

一方で、一般的なロック・アルバムのような高揚感や、メロディを前面に押し出す構成は薄い。実際に聴くと、音が鳴っているのに空間が広く感じられる箇所が多く、歌が主役というより、歌も音響の一部として扱われている印象が残る。そこが本作の面白さであり、同時に聴き手を選ぶ部分でもある。

日本盤の仕様

この日本盤は1980年のヴィンテージ盤で、VirginのVIP-6950。帯付きで、英語と日本語の歌詞を収めた4ページの折り込みインサート、さらに日本語解説の別紙が付属する。バックカバーには、ロンドンのBerry StreetとBrixtonで録音され、ニューヨーク、ミュンヘン、メイドストーン、移動中にも追加録音が行われたことが記されている。日本製造はVictor Musical Industries, Inc.表記。盤面は光に透かすとやや茶色がかって見え、JVC Supervinylでプレスされた個体であることがわかる。ランアウトはスタンプ刻印。

Virginの1980年盤らしく、ジャケットやレーベルの時代感も含めてまとまった仕様だ。オリジナル発売年と同年の日本盤なので、後年の再発盤とは違い、当時の発売時点の空気をそのまま伝える一枚になっている。

代表曲「Money」とアルバムの聞こえ方

この作品でまず触れられるのはやはり「Money」だ。UKシングル・チャートで5位まで上がった代表曲で、アルバムの入口としても機能している。ただし、アルバムを通して見ると「Money」ほどわかりやすい引っかかりは多くない。むしろ、曲ごとの断片性や、音の抜き差しの妙が続く構成で、1曲単位の強さより、全体の配置で聴かせるタイプの作品だ。

当時の紹介でも、ありふれた素材をずらして提示する発想が注目されていた。のちの評価でも、知的な仕掛けや音響面の工夫は認められつつ、ヒット曲ほどの即効性は薄い、という見方が並ぶ。本作は、フライング・リザースというプロジェクトが「ポップを解体する」側に立っていたことを、最初に明確に示したアルバムとして残っている。

まとめ

『ミュージック・ファクトリー』は、ヒット曲「Money」を入口にしながら、ポップの形式を少しずつ崩していくデビュー作だ。1980年という時代の中で、ニューウェイヴ、実験音楽、ダブ感覚、アート・スクール的な発想が交差した記録として見ると、作品の輪郭がつかみやすい。派手な演奏や大きなドラマを前に出す盤ではないが、音の置き方、間の取り方、歌の扱い方に独特の設計がある。日本盤はその初出時の形をよく伝える仕様で、帯、対訳、解説、そしてSupervinylの盤質まで含めて、当時の国内発売盤らしい手触りがある。

トラックリスト

  1. A1 Mandelay Song = マンドレイ・ソング 2:28
  2. A2 Her Story = ハー・ストーリー 4:40
  3. A3 TV 4:00
  4. A4 Russia = ロシア 6:36
  5. A5 Summertime Blues = サマータイム・ブルース 3:31
  6. B1 Money = マネー 5:49
  7. B2 The Flood = ザ・フラッド 4:56
  8. B3 Trouble = トラブル 2:48
  9. B4 Events During Flood = イベンツ・デュアリング・フラッド 3:24
  10. B5 The Window = ザ・ウィンドウ 5:35

動画プレイリスト

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