Vinyl Record Reviews
The Lounge Lizardsは、1978年にサックス奏者のジョン・ルーリーと、弟でピアニストのエヴァン・ルーリーを中心に結成されたグループだ。ニューヨークのパンク/ノー・ウェイヴ・シーンから登場し、当初はジャズを皮肉めいた視点で扱う「フェイク・ジャズ」的なスタイルで注目を集めた。
バンド名の「Lounge Lizards」は、富裕層の集まる場所で女性を口説こうとする、派手な服装の男を指すアメリカの俗語から取られている。名前の時点で、ジャズの定型をそのままなぞるつもりがなかったことがうかがえる。
初期のThe Lounge Lizardsは、ジャズの形式をそのまま再現するのではなく、演奏や見せ方にひねりを入れたバンドとして知られた。1981年のデビュー作『Lounge Lizards』あたりからは、ジョン・ルーリーの作曲を軸に、パンク、ファンク、映画音楽、ワールドビートなどを取り込む方向へ移っていく。
活動期間はおおむね1998年頃までとされ、ルーリー兄弟が一貫して中心メンバーを務めた。その一方で、アルト・リンゼイ、マーク・リボー、アントン・フィアー、スティーヴ・ピッコロ、スティーヴン・バーンスタイン、エリック・サンコ、カーティス・フォルクスなど、ニューヨークのアンダーグラウンド・シーンを代表するミュージシャンが参加している。
The Lounge Lizardsの初期は、ジャズの様式をそのまま演奏するというより、ジャズという形式を素材にして遊ぶような作り方が目立つ。ノー・ウェイヴの文脈に近い、鋭い切り口のある音作りが特徴だった。
その後は、ジョン・ルーリーの作曲性が前に出るようになり、編成や楽曲の幅も広がっていく。サックス、ピアノを軸にしながらも、ファンクのリズムや映画音楽に近い展開、さらに他ジャンルの要素を混ぜた曲が並ぶ。ジャズの即興性だけでなく、曲としての構成をはっきり持った作品が多い。
ジョン・ルーリーは音楽活動だけでなく、俳優としても知られている。ジム・ジャームッシュ監督の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1984年)への出演で広く注目され、続く『ダウン・バイ・ロー』(1988年)、『ミステリー・トレイン』(1989年)では音楽も担当している。
このジャームッシュ作品との関係は、The Lounge Lizardsの周辺にあるニューヨークの映画・音楽シーンを理解するうえで重要な要素になっている。バンドの音楽が、単なるジャズの派生ではなく、当時の都市文化の中で受け止められていたことも見えてくる。
The Lounge Lizardsには、ルーリー兄弟を軸に多くのミュージシャンが参加している。公開されているメンバー情報には、以下の名前が含まれる。
この顔ぶれを見ると、単独の固定バンドというより、ニューヨークの先鋭的な演奏家たちが集まるプロジェクトとしての性格も強い。
The Lounge Lizardsを聴くときは、ジャズの定番的な展開を期待するより、編曲やリズムの組み立てに注目すると分かりやすい。初期作では、ジャズの記号をずらすような演奏が目立つ一方、後期に進むほど、曲そのものの設計やアンサンブルの作り込みが前面に出てくる。
ノー・ウェイヴ、パンク、ファンク、映画音楽の要素がどう混ざっているかを追うと、このバンドの輪郭が見えやすい。ジャズを起点にしながら、その外側の音楽を積極的に取り込んでいく流れが、The Lounge Lizardsの大きな特徴として残っている。