Vinyl Record Reviews
The Moveは、1965年12月にイングランドのバーミンガムで結成されたロックバンドだ。ロイ・ウッド(ギター、ヴォーカル)、カール・ウェイン(ヴォーカル)、トレヴァー・バートン(ギター)、エース・ケフォード(ベース)、ビヴ・ビヴァン(ドラムス)を中心に始まり、その後メンバー交代を重ねながら1972年まで活動した。
ロックを軸にしながら、ポップ、サイケデリア、フリークビート、さらに後年はプログレッシヴ・ロックの要素も取り込んだバンドとして知られる。ロイ・ウッドの作曲面が大きく、引用を交えたアレンジや、曲の中での細かな仕掛けが目立つ。
The Moveは英国のシングル・チャートで立て続けに結果を残したバンドでもある。デビュー・シングル「Night of Fear」は全英2位を記録し、続く「I Can Hear the Grass Grow」は5位、「Flowers in the Rain」は2位、「Fire Brigade」は3位と、1966年から1968年にかけて上位ヒットを連発した。
1969年2月には「Blackberry Way」が全英1位を獲得している。バンド唯一のNo.1シングルがこの曲だ。なお「Flowers in the Rain」は、BBCラジオ1の開局時に最初にかけられた曲としても知られる。
初期のThe Moveは、ザ・フーやアメリカ西海岸のグループから影響を受けていた。演奏だけでなく、ステージ演出でも注目を集めていて、フラッシュ・ボムや煙を使ったり、テレビを壊すような派手なパフォーマンスが話題になった。
楽曲面では、チャイコフスキーの旋律を引用した「Night of Fear」のように、既存のメロディを取り込む手法が見られる。ロックバンドとしての勢いに加えて、ポップ寄りの分かりやすさや、細かい編曲の工夫が並んでいたのがこのバンドの特徴だ。
スタジオ・アルバムは4作ある。1968年の『Move』、1970年の『Shazam』と『Looking On』、1971年の『Message from the Country』だ。このうち全英チャートに入ったのはデビュー作『Move』で、最高15位を記録している。
メンバーは途中で入れ替わっていく。エース・ケフォードは1968年に体調面の問題などで脱退し、トレヴァー・バートンも1969年に離脱した。1970年にはジェフ・リンが加入し、ロイ・ウッドとともにソングライティングの中心を担うようになる。
ロイ・ウッドは、オーケストラ的な要素とロックを組み合わせた新しいバンドを構想していた。その流れの中で、The Moveの最終アルバム『Message from the Country』と、エレクトリック・ライト・オーケストラ(ELO)の初期作品は並行して作られた。
1972年にはロイ・ウッド、ジェフ・リン、ビヴ・ビヴァンがELOへ本格的に移り、The Moveは解散した。The Moveの終盤は、次の活動へつながる準備期間としても見ておくと流れが追いやすい。
最後のシングルとなった「California Man」は全英7位を記録し、「Do Ya」はバンドとして唯一の全米Hot 100入りを果たして93位に入った。「Do Ya」は後にELOが再録音し、アメリカでヒットしている。
カール・ウェインは2000年代にザ・ホリーズのリード・ヴォーカルを務め、2004年に亡くなった。ロイ・ウッドはその後Wizzardを率いた。The Move自体はアメリカで大きな成功を得たわけではないが、英国では60年代を代表する人気バンドの一つとして扱われている。
The Moveは、ヒット曲だけを並べても十分に面白いが、メンバーの入れ替わりやELOへの接続まで含めて追うと、60年代後半から70年代初頭の英国ロックの流れが見えてくるバンドだ。