The The

Vinyl Record Reviews

The The

The Theとは

The Theは、シンガーソングライターのMatt Johnsonを唯一の固定メンバーとするイギリスの音楽/マルチメディア・プロジェクトだ。メンバーは作品ごとに入れ替わる流動的な形をとっていて、長い活動の中でJohnny Marr、David Palmer、James Eller、Earl Harvin、Eric Schermerhorn、Barrie Cadogan、David Collardらが参加してきた。

活動開始は1979年から1980年ごろで、最初のシングル「Controversial Subject」は1980年に発表された。早い段階から、ロックと電子音楽をまたぐ作り方を続けてきたグループとして知られている。

80年代の主要作品とバンドの変化

1983年のアルバム『Soul Mining』で本格的に注目を集めた。ここではZeke Manyika、Jools Holland、Thomas Leerらが参加していて、固定メンバー制ではないThe Theのやり方が早くもはっきりしている。

1986年の『Infected』では、Zeke Manyikaに加えてNeneh Cherryや複数のセッション・ミュージシャンが参加した。シングル「Heartland」は全英チャートで29位を記録している。さらに、このアルバムには長編映像作品『Infected: The Movie』も付随していて、ボリビア、ペルー、ニューヨークで撮影された。

1988年には4人編成として再始動し、元The SmithsのJohnny Marr、ベーシストのJames Eller、元ABCのドラマーDavid Palmerが参加した。この体制で作られた『Mind Bomb』は全英アルバムチャート4位を記録し、シングル「The Beat(en) Generation」も全英18位まで上がった。1989年にはキーボードのD.C. Collardが加わり、1989年から1990年にかけて世界ツアーを行っている。

1990年にはEP『Shades Of Blue』を発表し、1993年には5人編成で『Dusk』を制作した。『Dusk』は全英2位を記録していて、その後のツアー「Lonely Planet tour」も行われた。さらに同じ時期にメンバーの入れ替えが進み、アメリカ移住後は体制が変わっていった。

1990年代後半から2000年以降

1995年の『Hanky Panky』はHank Williamsのカバー集で、The Theとしてはかなり性格の違う作品になっている。ここでは「I Saw The Light」のカバーが全英31位を記録した。

2000年には『NakedSelf』をリリースした。この時期の編成にはEric SchermerhornやEarl Harvinが含まれていて、ここでも参加者の顔ぶれは固定されていない。『NakedSelf』後も長期ツアーが続き、Naked Tourは14か月に及んだ。

2003年以降、Matt Johnsonは表舞台から距離を置き、ドキュメンタリー、映画、アートインスタレーションのサウンドトラック制作を中心に活動した。2014年には『Soul Mining』の30周年記念としてリマスター盤が出ている。

2024年の復帰作『Ensoulment』

2024年9月6日には、24年ぶりとなる新作スタジオアルバム『Ensoulment』がCinéola/earMusicからリリースされた。制作には、数年前に受けた緊急の喉の手術を乗り越えたことも関わっていて、Matt Johnsonにとっては久々の大きな復帰作になった。

本人はこのアルバムについて、キャリアの中で最も楽しんで作れた作品だったと振り返っている。批評面では、脱人格化に抗う美しくも陰鬱な作品として受け止める声がある一方、印象が弱いという見方もあり、評価は分かれている。

音楽的特徴

The Theの音楽は、ElectronicとRockを軸に、Synth-popとAlternative Rockの要素を行き来している。作品ごとに編成が変わるので、同じバンド名でもアルバムごとに音の作りが少しずつ違う。とはいえ、Matt Johnsonの作家性が中心にある点は一貫している。

80年代の作品では、シンセサイザーを使った楽曲とギター主体の曲が並び、ポップな輪郭を持ちながらも、内容はかなり個人的で内省的なものが多い。『Mind Bomb』や『Dusk』のような時期には、ロックバンドとしてのまとまりも前に出てくる。

また、The Theは音楽作品だけでなく映像やサウンドトラックとも近い位置で活動してきた。アルバム単位で聴くと、曲だけでなく全体の構成やテーマの置き方にも意識が向いている印象がある。

参加ミュージシャンと関連サイト

これまでに参加したミュージシャンには、Johnny Marr、David Palmer、James Eller、Earl Harvin、Eric Schermerhorn、Barrie Cadogan、David Collard、Colin Lloyd-Tucker、Keith Laws、Tom Johnstonなどがいる。The Theは固定メンバーのバンドというより、Matt Johnsonを軸にした制作プロジェクトとして見るほうが分かりやすい。

The Theは、80年代の代表作から2024年の『Ensoulment』まで、活動間隔を空けながらも作品ごとに確かな存在感を残してきた。編成の変化が大きい一方で、Matt Johnsonの曲作りと視点は一貫していて、そこがこのプロジェクトの核になっている。

toast