Vinyl Record Reviews
The Treacherous Threeは、1978年にニューヨークのハーレムで結成されたオールドスクール・ヒップホップのグループだ。Kool Moe Dee、L.A. Sunshine、Special Kを中心に、DJ Easy Leeが加わって活動を始めた。後年はSpoonie Geeも初期メンバーとして語られている。
グループは、近所のつながりや学校、バスケットボールを通じた人間関係から集まったメンバーで動き出した。Spoonie GeeがEnjoy Recordsと契約したことをきっかけに、Bobby Robinsonの協力を受けて1980年にレコード・デビューしている。
初期作品の中でも、「Love Rap」のB面に収録された「The New Rap Language」は重要な1曲として扱われている。この曲では、Kool Moe Deeが作った高速で畳みかけるラップが前面に出ていて、後のグループの特徴を形づくった。
The Treacherous Threeの大きな特徴は、速いラップを前面に出したことだ。とくに「The New Rap Language」で示されたダブルタイム系のフロウは、当時のヒップホップの中でも目立つスタイルだった。
ラップの速度だけでなく、語り口の切り替えや畳みかけるような展開もこのグループの持ち味として知られている。単純な掛け声型のラップではなく、言葉数の多い構成で勝負していた点が、初期ヒップホップの中でも印象に残る部分だ。
1981年にはSugar Hill Recordsへ移籍し、Philippé Wynneを迎えた「Whip It」でデビューした。その後も「Yes We Can-Can」のように、社会的なメッセージを含む楽曲を発表している。
この時期は、Enjoy Records時代のシングル群から一歩進み、制作面でもレーベルの色が反映された活動が続いた。1980年代前半のヒップホップ・シーンの流れの中で、シングルを中心に存在感を示していたグループだ。
1980年代半ばになると、Run-D.M.C.らニュー・スクール世代の台頭もあり、グループの立ち位置は変化していく。レーベルからの収益配分への不満も重なり、最後のシングル「Gotta Rock」の制作時にはL.A. SunshineとSpecial Kが相次いで離脱した。
その後、グループはいったん解散している。1993年にはDJ Easy Leeのレーベルのもとで再結成し、1994年2月に再結成アルバム『Old School Flava』を発表した。
The Treacherous Threeは、オールドスクール・ヒップホップの初期に、速いラップのスタイルを広く示したグループとして知られている。特に「The New Rap Language」で見せたアプローチは、その後のラップ表現を考えるうえで重要な資料になっている。
ハーレム出身のグループとして、初期ヒップホップのローカルな人間関係から生まれた活動形態も印象的だ。シングル中心で活動しながら、後の世代にラップの技法を残した存在として見ておきたい。