Vinyl Record Reviews
Tom Tom Clubは、Talking HeadsのメンバーだったTina WeymouthとChris Frantzが1981年に始めたアメリカのグループだ。もともとは、David Byrneがソロ活動などで忙しい時期に、二人が音楽活動を続けるために立ち上げたサイドプロジェクトとして動き出した。
最初は1曲だけのシングル制作を想定した企画だったが、Island Recordsの創設者Chris Blackwellに招かれてナッソーのコンパス・ポイント・スタジオで制作が進み、アルバム単位のプロジェクトへ広がった。制作にはTinaの姉妹たちや、Adrian Belew、Steve Scales、Alex Weir、Tyrone Downieら、当時の現場でつながりのあったミュージシャンも加わっている。
1981年に発表されたセルフタイトルのデビュー作は、Tom Tom Clubの出発点として知られている。この作品からシングル・カットされた「Genius Of Love」は、当時のダンス・クラブで支持を集めた。
この曲は、その後の音楽史でも繰り返し参照されていく。サンプリングされた回数は約200回近くにのぼるとされ、長く使われ続けてきた。
ジャンルとしてはElectronic、Popに分類され、スタイル面ではSynth-pop、Disco、Dubの要素が挙げられる。Talking Headsの流れをくむグループではあるが、Tom Tom Clubではリズムの置き方やベースラインの作り方が前面に出ている。
クレジットを見ると、Wally Badarou、Rupert Hine、Gary Pozner、Raymond Jones、Bruce Martinなど、制作や演奏に関わった名前が多い。こうした体制からも、バンドというより、スタジオでの共同作業を軸にしたプロジェクトとしての性格が見えてくる。
Tom Tom Clubを語るうえで、「Genius Of Love」は外せない曲だ。この曲は、Mariah Careyの1995年の「Fantasy」で引用され、世界的なヒットにつながった。Careyは、ラジオで久しぶりに「Genius Of Love」を耳にしたことが「Fantasy」制作のきっかけになったと語っている。Tom Tom Club側もこのサンプリングに権利を許諾したとされる。
さらに2021年にはLattoの「Big Energy」でもサンプリングされていて、40年以上たっても新しい世代の楽曲に組み込まれている。ダンス・ミュージックやヒップホップの文脈で何度も参照されてきた点は、Tom Tom Clubの存在を考えるうえで重要だ。
Tom Tom Clubには、Chris Frantz、Tina Weymouthを中心に、Steve Scales、Alex Weir、Tyrone Downie、そしてTinaの姉妹であるLoric、Lani、Laura Weymouthらが加わった。ウェブ上の情報では、Wally Badarou、Steven Stanley、Adrian Belew、Mystic Bowie、Charles Pettigrew、Roddy Frantzなど、時期によって関わるメンバーも多い。
こうした構成から、固定メンバーのロックバンドというより、制作ごとに人が集まる柔軟な形で活動してきたことがうかがえる。